
新卒採用のAI活用事例を6選ご紹介!AI活用のメリット・注意点・手順も解説
株式会社C And 代表取締役
近年、新卒採用の現場では、AIを活用した選考プロセスの導入が進んでいます。
本記事では、新卒採用におけるAIの活用事例を紹介するとともに、AIを導入するメリットや注意点について詳しく解説します。AIの活用によって採用活動はどのように変化しているのか、最新の動向をチェックしてみましょう。
新卒採用のAI活用事例6選【国内企業】
では、国内企業の新卒採用でのAI活用事例をご紹介します。
【ソフトバンク】ES選考にAI活用で作業時間を4分の1に短縮
ソフトバンクは、新卒採用のエントリーシート(ES)選考にAIを導入し、業務の効率化と精度向上を実現しています。
同社は、IBMが提供する人工知能(AI)およびデータ分析のプラットフォーム「IBM Watson」を活用し、過去の選考データをもとにESの内容を自動評価する仕組みを構築。応募者の文章を解析し、論理的な一貫性や表現力を数値化することで、評価の標準化を可能にしました。
AIが不合格と判断したESについては、人事担当者が再審査を行う体制を整えており、AIの判断に頼りきりにせず、公平性を確保しています。
このシステムの導入により、ESの確認作業にかかる時間を年間680時間から170時間へと約75%削減。人事担当者は面接やフォローアップなど、より重要な業務に集中できるようになったと述べています。
参考:SoftBank「エントリーシートのAI判定で、作業時間を4分の1に短縮。」
【横浜銀行】ES選考で人工知能KIBITを活用し、選考時間を約70%削減
横浜銀行は、株式会社フューチャーアーキテクトが開発した人工知能(AI)システム「KIBIT」を活用し、新卒採用のエントリーシート(ES)選考の効率化と精度向上を実現しています。
AIは応募者のエントリーシートを分析し、熱意や志望度をスコア化。書類選考の最終判断をする際は担当者が必ずエントリーシートに目を通すようにしていますが、このスコア化により選考時間を約70%削減し、従来の選考基準に基づいてより一貫した公平な判断を下すことに成功しています。
KIBITによるスコアの正確性について、過去データでの選考プロセスのバックテストも実施しており、
- 選考プロセスが進むにつれて通過者の平均スコアが上昇している
- 通過者の中でも「辞退者」のスコアが全プロセスで低い
ことが確認できます。(図1)
この結果から、KIBITスコアは「従来の適性検査では測れない」潜在的な熱意や志望度を表す新たな指標と言えます。
参照:株式会社横浜銀行「新卒採用のエントリーシート選考にAIを導入」
【キリンホールディングス】新卒採用にて「AI面接官」導入決定
キリンホールディングスは、2024年10月に行われたトライアル導入の結果を踏まえて、新卒採用の面接プロセスに「AI面接官」を本格導入することを決定しました。
「AI面接官」は、キリンが採用活動における課題を解決するために導入したシステムで、応募者との面接をAIが担当します。面接官の代わりにAIが応募者に対して定められた質問を投げかけ、その回答内容を言語解析や感情分析を通じて評価します。このシステムにより、応募者の発言内容から適性や個性を数値化し、従来の面接官による判断に頼らずより客観的な選考が可能になります。
AI面接官の特徴として、
- 書類選考・1次面接の日程調整/実施/評価/申し送りを全てAIが対応
- 24h365日面接を受験可能
- 経済産業省が定める、社会人基礎力を含めた16項目で評価可能
- データドリブン採用の実現
などが挙げられます。
「AI面接官 HP」によると、「選考対象者数20%増加」「初期選考時間97%減少」といった効果が見込めるようです。さらに、AIによる定量的な評価データを基に、採用判断の精度を高めることが可能となり、選考プロセス全体がより透明性を持つようになっています。
参考:PR TIMES「キリンホールディングス、AI面接官を本格導入決定」
【デジタルホールディングス】面接AI「SHaiN」活用で判断精度を向上
デジタルホールディングスは、面接にAIを活用することで、採用プロセスの効率化と公平性の向上を実現しています。
同社は、対話型AI面接サービス「SHaiN」を導入し、面接時における応募者の回答内容をAIが分析する仕組みを導入。AIは、応募者の表情や声のトーン、言葉遣いなどをリアルタイムで解析し、応募者の性格や能力を数値化します。これにより、面接官は感情に左右されず、客観的かつデータに基づいた評価が可能となりました。
AIの導入により、面接にかかる時間を削減し、面接官はより多くの応募者と接することができるようになりました。また、AIによる評価データを基に、面接官はその後の評価をスムーズに進めることができ、採用の判断精度も向上したと述べています。
また、「SHaiN」は24時間365日、どこでも面接ができるため応募者の増加といった効果も見込めるでしょう。
参考:SHaiN「株式会社デジタルホールディングス」
【株式会社ソフトクリエイト】新卒採用向け生成AIチャットボット
株式会社ソフトクリエイトは、新卒採用の効率化と応募者の理解促進を目的に、生成AI技術を活用したチャットボット「ソフクリAI質問ルーム」を導入しています。
このチャットボットは、学生からの「社風」「福利厚生」「選考プロセス」などの質問に24時間対応可能です。応募者は気軽に疑問を解消でき、採用担当者の負担もかなり軽減されたと述べています。
導入の背景には、メールでの問い合わせにハードルを感じる学生が多いことや、企業理解のばらつきを解消したいという課題がありました。生成AIを活用することで、従来のシナリオベース型とは異なり、情報を追加するだけで自動学習し、自然な対話形式で回答が可能になっています。
運用開始後、学生の企業理解度向上や内定辞退率の低下に貢献し、採用業務の効率化も実現しています。
参照:新卒採用向け 生成AIチャットボット「ソフクリAI質問ルーム」
【株式会社SAMURAI】AI適性検査導入で離職率を半分以下に
株式会社SAMURAIは、採用におけるミスマッチを防ぐため、AI適性検査「アッテル」を導入しました。
「アッテル」は、適性検査やサーベイによるデータ蓄積から分析、AIによる各種予測までをワンストップで実現できるサービスです。2020年5月のリリースから約3年で、上場企業を中心に1000社以上に利用されています。特徴として、応募者の思考や行動特性を数値化し、企業の求める人材との適合度を客観的に評価できる点が挙げられます。
株式会社SAMURAIは「アッテル」導入の結果、離職率が10%台半ばから約4%へと大幅に低下。さらに、入社1ヶ月で成果を上げる社員や、早期にMVPを獲得するハイパフォーマーの採用にも成功しています。AIの活用により、従来の主観的な評価からデータドリブンな選考へと移行し、より精度の高い採用が可能になっています。
参照:PR TIMES「株式会社SAMURAIがAI適性検査「アッテル」を導入」
新卒採用のAI活用シーン
ここでは、新卒採用の業務内でどのようなAI活用が考えられるかシーン別にご紹介します。
採用計画の策定/応募者募集
企業が新卒採用を成功させるためには、採用基準の明確化や市場動向の把握が欠かせません。また、母集団である応募者を増やすことでより良い人材を採用できる可能性が高くなります。
AI活用としては以下のようなものが考えられます。
- データ分析による採用基準の最適化(過去の選考データを活用)
- 市場調査の自動レポート作成(求人動向・競合分析)
- 求人広告の自動最適化(ターゲット別に最適な訴求をAIが提案)
- SNS投稿の自動生成・スケジューリング
応募受付・管理
エントリーシート(ES)の受付・整理、学生との日程調整、応募者対応(メール・電話・問い合わせ対応)といった細かな業務においてもAI活用の可能性があります。
- AIチャットボットによる問い合わせ対応の自動化
- 応募者データの自動整理・分析
- 日程調整の自動化(カレンダー連携)
書類選考(エントリーシートの評価)
AIは自然言語の処理、特に文章の処理が得意なため書類選考における活用の可能性は非常に大きいと言えます。AIにエントリーシート(ES)の選考をさせることで大幅な業務効率UP・担当者のバイアスに寄らない評価の標準化といった効果が期待できます。
適性検査
新卒採用のプロセスに適性検査を導入している企業が多いですが、AIを活用することで適性検査の結果をより細かく分析できたり、その後の選考に活かせる可能性があります。
具体的には、「適性検査の自動分析・レポート作成」や「試験結果を基にした面接質問のカスタマイズ」といった活用法が考えられます。
面接選考
面接選考もAI導入が進んでいる分野の一つです。
- AIが面接官となって、応募者を自動で評価
- 面接官ごとの評価傾向の分析・バイアス検出
- 面接内容の自動文字起こし・要約
などAIによって面接を無人で行ったり、面接官が応募者を評価するのをサポートするような活用の仕方も考えられます。
新卒採用でAIを活用するメリット
新卒採用でAIを活用するメリットとして、大きく2つ挙げられます。
新卒採用でAIを活用するメリット
- 選考業務の労力削減
- 公平性・精度の向上
選考業務の労力削減
AIを活用することで、エントリーシートの解析や候補者の評価が自動化され、選考にかかる時間が大幅に短縮されます。
特に大量の応募がある企業では、AIが応募者の志望度や適性を分析し、スクリーニングを行うことで、面接官が本来注力すべき業務に集中できる環境が整います。
公平性・精度の向上
AIは一貫した基準で応募者を評価するため、面接官の主観に左右されず、公平な選考が可能になります。
また、過去の採用データを学習しているため、企業の求める人材と適合度の高い応募者をより正確に見極めることができます。データに基づいた採用判断が可能になり、選考の精度が向上することで、入社後のミスマッチを防ぐ効果も期待できます。
新卒採用でAIを活用する際の注意点
新卒採用でAIを活用することはメリットも大きいですが、いくつか注意点があります。
新卒採用でAIを活用する際の注意点
- AIの判断に依存しすぎない
- システム導入と運用のコスト
- プライバシーとデータ管理の徹底
AIの判断に依存しすぎない
AIはデータに基づいた客観的な評価が可能ですが、人の感覚や柔軟な判断が求められる場面も多くあります。AIの判定結果を鵜呑みにせず、人事担当者が最終的な意思決定を行うことが重要です。実際、今回事例として紹介したソフトバンクや横浜銀行はAIが不合格と判断したものについては、人事担当者が再審査を行う体制を整えています。
また、AIは過去のデータを学習して判断を行うため、偏ったデータをもとに学習すると、評価基準にバイアスが生じる可能性があります。AIのアルゴリズムを定期的に見直し、公平性を保つ対策が必要です。
プライバシーとデータ管理の徹底
AIは応募者の個人情報や選考データを処理するため、データの管理やセキュリティ対策を徹底する必要があります。
個人情報保護法などの法規制を遵守し、安全に運用するためには、使用するAIツールのセキュリティポリシーを事前に確認し、適切なデータ管理体制を整えることが重要です。また、アクセス権限の管理やデータの暗号化、ログの監視を徹底し、社内のAI活用ルールを強化することで、情報漏洩の防止が可能です。
企業としてAIの利便性を活かしながらも、応募者の信頼を損なわないために、安全な運用を心がけることが求められます。
システム導入と運用のコスト
AIを導入するには、適切なシステムの選定、データの管理、メンテナンスが必要です。初期費用や運用コストがかかるため、導入の目的や費用対効果を十分に検討することが大切です。
詳しくは次の「AIをビジネス活用する手順」をご覧ください。
AIをビジネス活用する手順
ここでは、生成AIのビジネス活用における大まかな手順について解説していきます。これからAIの社内導入を検討している経営者/管理職/推進担当の皆様問わず、プロジェクトを進めていくイメージをつけたい方向けのセクションです。
①AIを活用することで解決したい課題と活用目的の策定
まず業務の棚卸しをして、その中でAIを活用することで何をどのような状態にしたいかを決めましょう。
例えば、「エントリーシート審査の業務時間を削減したい、公平性を高くしたい」「面接選考の数は減らさずに、人事が面接に割く時間を3分の2にしたい」などです。
ここができていないとAIを使うことが目的になってしまい、本質的な解決にならないことがよくあります。せっかく予算も期間もかけて開発したのに、全く使えないという状況が起きないようにしましょう。
②課題解決のためのソリューション考案と選定
AIで解決するべき課題と活用目的が定まったら、それらを解決するソリューションを考案しましょう。
アプローチの仕方は、大きく「既存のAIツール導入」か「自社用のAIを開発」の2通りです。
「既存のAIツール導入」は、短期間で導入可能かつ初期コストが比較的低いです。また、多くの企業での実績があり、安定した運用がしやすい点もメリットです。デメリットとしては、カスタマイズ性が低いこともあり、企業独自の選考基準に完全に適合しない場合があることです。
一方「自社用のAIを開発」では、独自の採用基準や評価フローに最適化でき、制度を高くできる点が最大のメリットです。デメリットとしては、開発コスト・期間がかかる点や個人情報保護や法規制への対応を慎重に進める必要がある点が挙げられます。他社に開発を依頼するケースも多いでしょう。
③AI導入の設計と準備
次に、AIの導入をスムーズに進めるための準備が必要です。具体的には、過去の採用データを整理し、AIが適切な判断を下せるように評価基準となる情報など学習データを用意します。
また、個人情報を扱うため、社内のデータ管理体制を見直し、個人情報保護法などの法規制を遵守した運用ができるようルールを明確にしておくことが欠かせません。
④AIの試験運用/検証
AIを実際に運用する前には、小規模な試験運用(パイロット導入)を行い、実際の業務でどのように活用できるかを確認します。
例えば、一部のエントリーシートをAIでスクリーニングし、その結果と人事担当者の評価を比較することで、AIの精度を見極めることができます。この段階で、AIの判断基準が適切であるか、過剰に特定の属性を重視していないかといった点を確認し、必要に応じて調整を行います。
また、この段階でAI活用によって「どれほど効率化が図れるのか、選考の精度が向上するのか」を測り、「コストに見合う成果が得られるか」といった観点から本導入を検討します。
⑤本導入/運用
検証結果が明らかになり、これは自社にとってプラスの効果をもたらすと判断できたら、これまでのデータなどを元に、自社にとっての経営インパクトがきちんと出るように要件定義を行い実施・本導入を行います。
実施したらこれで終わりということではなく、運用しながら検証していき、改善を継続する必要があります。
まとめ
新卒採用におけるAIの活用は、選考プロセスの効率化や公平性の向上、データに基づく精度の高い判断を可能にしています。実際に、多くの企業がエントリーシートの評価、面接、適性検査、応募者対応など、さまざまな場面でAIを導入し、その効果を実感しています。
しかし、AIの判断に依存しすぎると、採用基準の偏りや人の視点が欠けるリスクもあるため、適切な活用が求められます。導入を検討する際は、コストやセキュリティ対策も含め、慎重に設計することが重要です。
今後、AI技術の進化により、新卒採用のあり方もさらに変化していくでしょう。企業はAIを適切に活用しながら、人とテクノロジーのバランスを取り、より良い採用活動を目指していくことが求められます。
木俣太地
また、前職の株式会社MIXIで培ったブランドプロモーションスキルを活かし、話題化戦略を意識した制作した生成AI活用のアニメCMは、Xにて680万インプレッションを記録。幅広い形で生成AIを活用して、企業の課題解決に貢献。