小売業の生成AI活用事例5選|人手不足の解消に

小売 活用事例

株式会社C And 代表取締役

監修 木俣太地

小売業界は生成AIを用いて大幅に業務を効率化し、売り上げを伸ばすことのできる業界です。本記事では小売業界が現在抱えている様々な問題にAIを活用して取り組む方法について解説します。また、効果的な生成AI活用事例も5つご紹介します!

生成AIとは

生成AIとは、様々な形式のデジタルコンテンツを自動的に作り出す技術を指します。テキスト生成や画像生成、動画生成や音声生成など、生成可能なものは多岐にわたります。

生成AIの中でなじみ深いChatGPTはテキスト生成を行う生成AIツールの一つです。ChatGPTなどのテキスト生成AIは、入力したテキストに基づいてAIが文章を自動で生成します。

このように生成AIは、こちらからの指示文に合わせて、ほしいテキストや画像など全く新しいものを自動で作り出してくれる大変便利なツールなのです。

本記事では小売業界において生成AIを活用するヒントをご紹介します。

参考:NECソリューションイノベータ

小売業界で生成AIを導入すべき理由

小売業界が抱える課題

小売業者の皆様の中には、以下の課題を抱えている方も少なくないと思います。これらの課題の中には、生成AIを用いて解消することができるものも多くあります。

1,人手不足

小売業界は人手不足が深刻な業界です。人手不足の主な原因として、①長時間労働②休日の少なさ③低賃金などがあります。

少ない労働力で業務を滞りなくこなせるようになるため、生成AIの活用による生産性の向上は、人手不足の課題に対し非常に効果的です。また、業務効率化できれば、根本的な問題である長時間労働や休日の少なさも改善することができるのではないでしょうか。

2,流行の変化が早い

流行の変化が早い現代において、時代に合わせた商品開発やマーケテイングアプローチをしていくのは非常に難易度が高く、事業課題の1つと言っても過言ではありません。

また、近年では「共有」という概念が広がっており、様々なサブスクリプションが台頭しています。このままものを購入する機会が減っていくと、小売業はさらなる危機に直面するでしょう。

このように先が読めない中でのマーケティング戦略を練るとき、生成AIによる予測・提案があればより効率的かつ正確なマーケティングが実現するのではないでしょうか。

3,ECの普及

小売業界ではEC(電子取引)が一般化してきました。消費者はネットショッピングですべてを済ませてしまうのです。これにより、実店舗が実物を確認するだけの場所になると、店舗販売に主軸を置く企業の運営は困難に直面するでしょう。

実店舗に在庫があふれてしまうようなことのないよう適切な仕入れをする必要があるでしょう。また、消費者が実店舗で買い物をする施策を考えることも必要です。これらの仕入れ、施策を考える業務は、生成AIが多くのデータをもとにより正確かつ迅速に実施することができます。

生成AIの活用が可能な業務

次に、生成AIを導入することができる業務をご紹介します。

1,商品・商品情報の管理

商品・商品情報(商品名、概要、価格など)の管理は時間を要してしまう業務です。しかし、生成AIを利用すれば商品情報の登録などの業務に割く時間を大幅に減らすことができます。また、より正確な商品情報を最新の状態で管理することができるので、営業などの業務がよりスムーズに進められるようになります。

また、正確な商品情報はマーケティング業務をこなす中でも大変有益な情報です。

2,文書作成などの定型業務

文書作成、スタッフ・顧客管理、請求書申請などの定型業務はルーティンワークであるため、自動化が容易いといえます。ChatGPTなどの生成AIを活用することでこれらの業務を自動化できます。また、人よりもミスなく正確に業務を行えるのも魅力的です。

定型業務の​自動化を​図る​ことは、​業務効率を​上げると​同時に、​残業時間の​削減などスタッフ一人​ひとりの​負担軽減に​も​つながります。また、浮いた時間で新たな企画を考案するなど、より効率的に働くことができます。

3,マーケティング

流行の変化が早い小売業界において、マーケティングはかなり難しい業務です。流行に合わせて多くの消費者に購入してもらえるようなマーケティング戦略をスピーディーに練る必要があります。

そこで、画像生成AIや動画生成AIなどを用いて素早く広告を生成したり、テキスト生成AIにコピーを提案してもらうなどの業務効率化は大変有効といえます。これらの生成AIを利用すればより早く広告を作成することができ、流行にキャッチアップできるからです。ほかにも、市場調査やマーケット予測にAIを利用してもよいでしょう。

小売業界での生成AI活用事例6選

1,製造業・卸売業・小売業で商品情報を一元管理:トライアルホールディングス

トライアルホールディングスはJ-MORAを導入しました。J-MORAはAIなどの最新テクノロジーを活用して、メーカーや卸、小売がそれぞれで管理する商品のコードや原材料などの情報 〈 商品マスタ 〉 を共通化し、業務の効率化・均質化を実現するプラットフォームです。

従来は商品情報を自社のデータベースに登録し、取引先とのやり取りのたびに先方のフォーマットを変更し、何度も登録し打ち直していました。

この「同じ情報を何度も打ち直す」という非効率な作業を、生成AIとChatGPTを活用してすることで削減しています。各社フォーマットへの変換を自動で行うことで、作業の手間と入力ミスを減らしています。

出典:一般社団法人リテールAI研究会HP

参照:https://trial-holdings.inc/news/blog/6572cdd8b55141ad575a517c/
https://trial-holdings.inc/news/blog/657a705b0b452cf04bc15ca9

2,カタログの改善を100分の1の時間で:ウォルマート

ウォルマートでは製品カタログを改善するために生成AIを活用しています。具体的には、複数の大規模言語モデル(LLM)を使って、製品カタログ内の8 億 5,000 万件を超えるデータの商品の属性や特性を入力するのに生成AIを使用しています。これは手動で行うと100倍の時間がかかる作業です。

また、このプロジェクトにより商品ページが改善されたことで、サイトや店舗での顧客サービスの向上につながるといいます。全世界のウォルマートEコマース事業は、前年同期比(2024 年4-6月期)で 22% 成長しており、自社の製品カタログに生成 AI を使用したことが過去数か月にわたってEコマース事業に大きく貢献しています。

参照:https://diginomica.com/100-times-productivity-gain-improving-walmarts-product-catalog-gen-ais-benefits-are-tangible-says

3,生成AIを用いて文書作成・商品企画:イオングループ

イオンでは、グループ90社の約1000人で、Exa Enterprise AIが提供する「exaBase 生成AI」の利用が開始されました。店舗で使う文書の作成、商品企画・アイデア立案、IT開発のコード生成など用途は多岐にわたります。

出典:EXAZARDS HP

活用のトップユーザーが多かった人事部では、翻訳、文章レビュー、アイデア出しのほか、コード生成にも活用しており、人事部全体では月130時間もの業務削減につながったという試算もあるそうです。生成AIを導入することで勤務時間を大幅に削減することができています。

参照:https://exawizards.com/works/27151/

4,AIファッションモデルを用いて情報発信:しまむら

出典:しまスタイル/トレンド発信メディア【しまむら公式】

しまむらはSNSでの情報発信の際に生成AIが作成したAIモデル「瑠菜」を起用しています。

しまむらは新聞の折り込みチラシを主な広告としていましたが、客層の幅を広げるためにSNSを用いたマーケティングを強化することとなりました。

移り変わりの速いファッションの流行に対応するためには、即座に新しいファッションスタイルを発信していくことが重要です。そこで、従来のモデルとは違いスケジュールの確保や撮影の手間がかからないAIモデルを起用することでスピード感のある情報発信が可能になっています。

参考:https://www.shimamura.gr.jp/shimamura/sp/cont/luna/

5,画像生成AIを駆使した広告:パルコ

出典:パルコHP「パルコグループブログ(2024/03/06)」

パルコの2023年冬のホリデーシーズンを盛り上げたファッション広告「HAPPY HOLIDAYSキャンペーン」は、実際のモデル撮影は行わず、人物から背景まで、グラフィック・ムービー・ナレーション・音楽をすべて生成AIで作成しました。

生成AIを用いて業務を圧倒的に短縮できるだけでなく、生成AIがブランディングの形成にも有効に働くといいます。というのも、AIにブランディングに関する情報を入れ、アドバイザーのような形で会話を重ねながら、柔軟かつ芯のあるブランディングを維持していくことができるのです。これにより、変化が激しい世の中においても、時代に合った柔軟性のあるブランディングを進めていけることが期待できます。

参考:https://www.parco.co.jp/blog/detail/?id=678
https://markezine.jp/article/detail/45123?p=3

生成AIを導入する際の注意点

ここまで業務を効率的に進めることのできる生成AIについて解説してきましたが、生成AIを導入する際にはリスクも伴うことも知っておかなければなりません。ここでは、生成AIを導入することで起こりうるリスクを3つご紹介します。

情報漏えい

生成AIはユーザーが入力したデータを学習に利用します。そしてそのデータは、代わりに他の誰かのプロンプトに答えるために使用されるかもしれないのです。よって、個人情報や企業の機密情報を入力し、情報が流出してしまう危険性があります。

これを防ぐためには、生成AIツールなどへ機密情報などを入力しないようにすることが必要です。企業で導入する場合には、生成AIのアクセス権を制限したり、社内での使用ルールを策定すると良いでしょう。

誤情報の生成

生成AIは事実に基づかない誤情報を生成する危険性もあります。出力結果に誤情報が含まれている、あるいは指示と合わないコンテンツが生成されるなどの場合があります。

これは、生成AIが蓄積された学習データに基づいてコンテンツを生成するために、学習データが誤っていた場合などに起こり得ます。

どんなに精度の高い生成AIであっても構造上誤情報を生成する可能性があるため、人間がAIが生成した内容を確認・編集するプロセスを標準化することが大切です。

著作権の侵害

生成AIのリスクとしてよく挙げられるのは著作権の侵害です。基本的には生成AIによって作られた文章や画像は、思想又は感情を創作的に表現したものではないため著作物には該当しないとされています。

しかし、生成AIによる表現が特定の作品などに酷似している場合など、著作権侵害にはならずともレピュテーションリスクはあるので、生成されたもののチェックを行う必要があります。

まとめ

小売業界の生成AI活用事例を5つご紹介してきました。

これらの事例はすべて生成AIによって大幅に業務を効率化した事例です。皆様の企業においても、このように生成AIを上手く活用して業務を効率化し、人手不足の解消、また新たな領域への挑戦につなげていただければと願っております。

株式会社C And 代表取締役 / 企業の業務課題をきちんと解決できるChatGPT・生成AI活用の研修/コンサルティングのプロ。
また、前職の株式会社MIXIで培ったブランドプロモーションスキルを活かし、話題化戦略を意識した制作した生成AI活用のアニメCMは、Xにて680万インプレッションを記録。幅広い形で生成AIを活用して、企業の課題解決に貢献。