医療業界で生成AIは導入できる?活用方法や実際の活用事例、注意点について解説!

医療 活用事例

株式会社C And 代表取締役

監修 木俣太地

近年どの業界に対しても生成AIの導入が徐々に進められて来ています。
しかし、医療という繊細な業界に対して生成AIの導入は現実的なのか疑問に思う方もいると思います。

そこで今回は、医療業界で生成AIが今後どのように活躍していくか、導入の際の注意点などとともにご紹介していきます。

生成AIとは

生成AIとはテキスト、音声、静止画、動画などのオリジナルコンテンツを自動的に生成するAIです。プログラム、アート作品、楽曲、アニメーションなどを生成できます。

生成AIと聞くとChatGPTを真っ先に思い浮かべる方も多いと思います。しかし、生成AIには画像を生成することに特化したサービスや動画の生成に特化したサービスなどChatGPT以外にも様々なサービスがあります。

従来のAIは「分析や予測」を得意としていた一方、生成AIはこのような「生成」を得意としています。

生成AIの詳しい説明はこちら

医療業界での生成AIの活用方法3選

医療の分野において生成AIはあらゆる場面での活躍が期待されています。
今回は医療業界での生成AIの主な活用方法を3つ紹介します。

医療業界での生成AI活用方法

  • 書類作成の効率化
  • 過去の医療データへの効率的なアクセス
  • 生成AIを活用した問診

書類作成の効率化

生成AIが得意とする文書作成を活用することで、書類作成を効率化することができます。

この文書作成は、病院で作成した電子カルテやナレッジに沿って作成することも可能です。そのため生成AIは作業を効率化する上に、匿名性・情報の正確性も保った文書を作成できます。

過去の医療データへの効率的なアクセス

医療判断などの際に、関連する過去の医療データや研究論文を参考にすることもあると思います。

しかしそのような情報は分散して保存されていることが多いため、関連性の高い情報へのアプローチに時間がかかってしまうでしょう。

しかし生成AIを活用することで、状況別に関連性の高い情報に効率的にアクセスできるようになります。これは、作業時間の短縮につながるでしょう。

生成AIを活用した問診

生成AIは、問診の一部工程を担うことができます。問診の工程の中でも、患者の情報の収集・治療や病気についての説明は病気の種類によっては非常に時間がかかります。

このような工程に対話型生成AIを導入することで、問診の一部自動化が可能になります。

医療業界における生成AI活用事例5選

文書作成を生成AIで効率化【恵寿総合病院】

出典:PR Times Ubie株式会社

恵寿総合病院では、Ubieが提供する「ユビーメディカルナビ」という生成AIを組み込んだサービスを活用しています。
この病院では、生成AI活用により退院時に必要な「退院時サマリー」や「退院時看護要約」といった文章を、生成AIがサマリー案の指示に沿った形で作成してくれます。

そのため、医師や看護師の業務は情報に問題がないかチェックするだけと圧倒的に短縮されました。その結果、この病院では退院時の作業時間を年間540時間退院時の業務を三分の一に削減できたという効果が得られています。

参照:PR Times Ubie株式会社

対話型生成AIを活用した問診【大阪国際がんセンター】

出典:大阪国際がんセンター プレスリリース

大阪国際がんセンターの乳腺・内分泌外科で、AIアバターと対話型生成AIを組み合わせた会話システムを初診患者の問診に試験的に導入を始めました。

乳がんは根治性とともに治療後の整容性といった患者のライフスタイルや要望にも配慮する必要があります。そのため、疾患説明・同意取得をしたのちに治療方法の決定をする必要があり、診察には1時間程かかっていました。

そこで説明や同意取得にかかる時間の30%軽減を目標とし、乳がん患者への初診に対話型生成AIを導入しました。この生成AIに壁打ちで質問を患者がすることで、患者は疾患に対して理解を深めていくことができます。

また現状出ている意見として、医師よりも生成AIに対しての方が聞きやすいこともあるといったものもあり、生成AIだからこその良さも出ています。

参照:大阪国際がんセンター プレスリリース

過去の医療データ取得の効率化【メイヨークリニック】

参照:Mens Hat Selection Dairy

メイヨークリニックでは、Google cloudが提供する「Enterprise Search」というAIチャットボットを導入しました。このAIチャットボットは、過去の患者の病歴や診断画像、研究論文などのデータをもとに、質問に対する回答を作成してくれます。

今までは分散して保存されていた患者のデータや研究論文といった医療データを容易に取得できるようになります。そのため、このツールの活用により医療判断や患者のサポートの質向上や効率化が期待されています。

参照:ZDNET

電子カルテから文書を自動作成【東北大学病院】

出典:NEC HP

東北大学病院ではNECの提供する生成AIを活用し、医療文書を自動生成する実証を行いました。
このNECの生成AIは、電子カルテに記録された患者の情報、検査結果、経過、処方などの内容の要約文章を作成します。

このような要約文章の生成は、紹介状や退院サマリといった文章作成の時間を平均47%削減するとともに、文章の正確性も向上するという結果が得られました。

さらに、要約文章により膨大なカルテの情報から必要な情報を収集することが容易になりました。これにより、要約文書以外の文書作成にかかる時間の短縮にもつながる可能性が示唆されました。

参照:NEC HP

書類作成の効率化【京都大学医学部附属病院】

出典:Google cloud 顧客事例

京都大学医学部附属病院では、医師の文書作成業務の効率化のため、生成AI「CocktailAI」を導入しました。

カルテや退院時サマリー、診療情報提供書などの作成において過去のカルテ情報をもとに、AIが定型文の項目に自動的に文章を生成・挿入してくれます。医師は内容を確認し、必要に応じて軽微な修正を加えるだけでそれらの作業を完了できます。

検証では、退院時の診療情報提供書の92%で文書作成タスクの軽減効果が確認され、医師の働き方改革に貢献しています。

参照:Google cloud 顧客事例

医療業界で生成AIを活用する際の注意点

医療業界は人の命を扱う仕事であるがゆえに、取り扱う情報には最新の注意を払う必要があります。

そんな医療業界で生成AIを導入する際の注意点は以下のようなものがあります。

医療業界で生成AIを導入する際の注意点

  • 個人情報の取り扱い
  • 継続的な評価と更新
  • 生成内容の事実確認の実施

個人情報の取り扱い

医療業界で扱う情報は、個人情報や患者の健康情報といったセンシティブなものが多くあります。そのため生成AIの導入の際には、情報を安全に取り扱い漏洩を防ぐためのセキュリティー対策が必要です。

近年生成AIを導入している例でも、このような点には細心の配慮をしています。このように扱う情報の安全性を担保できるかをチェックした上で導入する必要があるでしょう。

継続的な評価と更新

医療業界ではより正確性の高い情報を扱うことを求められるでしょう。しかし生成AIが使用するデータが常に正しく、最新かつ包括的なものではありません。そのため定期的に生成AIの出力を評価し、適宜新しい情報や医療機関のナレッジを追加するといった更新が必要不可欠です。

継続的に評価・更新することで臨床環境に特有の問題点等も解決できるようになるため、業務の質向上も期待できます。

生成内容の事実確認の実施

生成AIは非常に効率的に医療知識を収集することができます。しかし症例が少ない病気や未知の症状に対しては、ハルシネーションが起こるリスクが高くなります。

そのため、無批判に生成された内容を受け入れるのではなく、適度に批判をすることも必要です。あくまで生成AIは、補助的なツールとして活用すべきであることを忘れないようにしましょう。

生成AIは取り入れてみる価値はある!

医療業界はほかの業界と比べると、大学病院や大きな病院のみが導入しているに留まり、加えてまだまだ導入に対し試験的な段階にあります。

試験的な段階にあるものを取り入れるのは少し挑戦的な判断になるでしょう。しかし導入まではいかずとも情報を収集しておくことは有効です。

今後AIは高確率で世界の動向を変えるピースになります。そのため、情報の収集と導入した際のメリットや課題を明確にしておけると良いかもしれません。

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株式会社C And 代表取締役 / 企業の業務課題をきちんと解決できるChatGPT・生成AI活用の研修/コンサルティングのプロ。
また、前職の株式会社MIXIで培ったブランドプロモーションスキルを活かし、話題化戦略を意識した制作した生成AI活用のアニメCMは、Xにて680万インプレッションを記録。幅広い形で生成AIを活用して、企業の課題解決に貢献。