製造業で生成AIは役立つ?製造業での生成AIの活用事例や導入によるメリットについて解説

製造 活用事例

株式会社C And 代表取締役

監修 木俣太地

近年ChatGPTをはじめとする「生成AI」を導入することで、業務の効率化などに成功している会社が増えてきています。

しかし生成AIが普及してから間もないこともあり、実際に製造業で活用するイメージがつかないという方も多いと思います。

そこで今回は、生成AIを製造業に取り入れるメリット実際の活用事例活用における課題などについて紹介していきます。

生成AIとは?

生成AIとは、データをもとに新しいコンテンツや情報を自動で作り出す人工知能です。

近年話題になっているChatGPTも生成AIの一つであり、これはテキストを自動生成するAIです。ほかにも、画像や動画、音声の自動生成を行うAIも活用されています。

生成AIについての詳しい解説は以下の記事で行っているため、参考にしてみてください。

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製造業での生成AI活用方法とメリット

生成AIは、製造業の様々な場面において活用されています。
今回は、生成AIが製造業でどのように活躍し、どのようなメリットがあるのかについて紹介します。

製品設計の最適化

生成AIは、製品設計において活躍しています。AIに製品の強度や製造コスト、構造などの制約条件を与えると、それに基づいた最適な設計を生成AIが自動的に生成します。

これは設計の工程が軽減・削減されることによる時間の削減や、製品設計の試行回数の削減といったメリットがあります。

しかしそれだけにとどまらず、構造の最適化に伴う材料の無駄の削減、それによるコストの削減、部品の最適化による耐久性・強度の向上といった製品の品質向上などあらゆる面に利益をもたらします。

生産プロセスの最適化

生成AIにより生産ラインの最適化をすることも可能です。
AIが生産プロセスの過去のデータをもとに、生産計画を自動で生成します。

データに基づき最適化された生産フローは、リードタイムの短縮、原材料や人員の最適な配分を可能にします。

デジタルツインの自動生成によるシミュレーションの効率化

デジタルツインとは、製造設備や生産ラインを仮想空間に再現したモデルのことです。

生成AIはこのデジタルツインを生成します。このデジタルツインは、温度や供給量といった製造における条件を変えることにより、あらゆる条件に対するシュミレーションを容易に行うことができます

このシステムを生かすことで現在の製品の性能向上、材料や工程の効率化によるコストの最適化生産効率の高いプロセスの設計などが実現可能です。

カスタマイズ製品設計の効率化

生成AIは顧客のニーズに応じた製品の開発にも役立ちます。
サイズ感や形状、機能などの顧客の要求に基づいて、製品のデザインを提案してくれます。

このデザインの改案も新たな要求を入力するだけで可能であるため、圧倒的に生産の工程を削減できます。

従業員の作業効率化

上記のような専門知識を必要とする領域以外にも、事務作業の効率化による従業員への負担軽減を実現できます。

生成AIは、お客様・クライアントへのメールの自動生成や会議の議事録の自動生成などを行ってくれます。またこれらのツールは自社で独自にカスタマイズして、自社のナレッジに沿った自動生成もできます。

これらを活用することで、業務効率が向上し人手不足の解消といった恩恵を得ることができます。

製造業での生成AIの活用事例7選

生成AIを自動運転技術に応用【BOSCH】

出典:BOSCH 「より安全な道路の実現に向け、生成AIで新境地を開拓」

製造業の企業として世界最大級の規模を誇る「BOSCH」でも、生成AIが活用されています。

BOSCHでは自動運転時の安全性を、従来のAIでは不可能であった領域に生成AIを導入することで向上させました。従来のAIでは、センサーで感知した周囲の状況から運転操作を行います。

しかしこのシステムには、プログラムされていない予期せぬ状況に対応できないといった欠点がありました。

そこで自動運転システムに生成AIを導入することで、具体的な危険性を判断することが可能になりました。例えばボールから考えうる危険を分析し、こどもが飛び出してくるといった予期せぬ状況に対応できるようになります。

このように、生成AIの応用により製品の安全性・質の向上といった恩恵を得ている事例があります。

参照:BOSCH「より安全な道路の実現に向け、生成AIで新境地を開拓」

生成AIの活用で開発期間の短縮【BOSCH】

出典:BOSCH 「より安全な道路の実現に向け、生成AIで新境地を開拓」

先述した「BOSCH」では、生成AIによる製造スピードの向上も期待されています。

BOSCHのドイツにある2つの工場では、生成AIによる画像作成により、光学検査用のAIソリューションの開発と拡張や既存AIモデルの最適化が可能になりました。

画像生成AIが生成した合成画像を、光学検査用AIのモデル改善のための学習データとして扱います。

これにより、以前よりも早くかつ大量のデータを得ることができるようになりました。その結果として、AIアプリケーションの計画と立ち上げ・増強にかかる時間を、現在の半年〜1年から数週間に短縮されることが期待されています。

参照:BOSCH「より安全な道路の実現に向け、生成AIで新境地を開拓」

生成AIを利用したデジタル発電所【JERA】

出典:JERA「現場の力をAIに乗せるデジタルパワープラント」

JERAは、国内外に62ユニットの発電設備を有しています。

これらの発電設備は問題が起きた際に、世界各国のエンジニアが言語・時間・空間を超えて仮想空間上で課題解決できる「デジタル発電所」へと進化しています。

この課題解決の際には、JERAが長年にわたって蓄積してきた発電所の運営ノウハウや課題解決策が生成AIから提供されます。

このような長年の経験則やデータを生成AIから得ることで、従来よりも早くそして質の高い課題解決が実現されています。

参照:JERA「現場の力をAIに乗せるデジタルパワープラント」

AIアシスタントサービスの活用【パナソニック】

出典:パナソニック「生成AI導入1年の実績と今後の活用構想」

パナソニックでは、ChatGPTベースのAIアシスタントサービス「ConnectAI」を国内全社員約12,400人に展開しています。

このシステムは、検索エンジンのような簡単な活用から戦略策定の基礎データ作成といった複雑な業務への活用まで幅広く使われています

また、このシステムには自社の製品の過去の品質問題や品質管理規定も組み込まれています。そのため、設計段階での製品の問題点や製造方法・作業手順に関する問題点の特定などを容易にし、大幅な作業時間の削減と品質向上につながっています。

この生成AIを活用したことで、全社で年間合計18万時間以上の業務時間の削減に成功しています。

参照:パナソニック「生成AI導入1年の実績と今後の活用構想」

生成AIを活用したアシスタンAIの活用【富士フイルム】

出典:富士フイルム「DX記者説明会資料」

富士フイルムでは、生成AIを活用したアシスタントサービスをグループの従業員約7万人に展開しています。

この生成AIはサプライチェーンの各プロセス、研究開発、新規製品企画などの際に幅広く活用されています。具体的には、製造計画や検査レポートなどの文書作成の効率化、議事録の作成、翻訳、社内独自のチャット型生成AIなど様々なツールを利用可能です。

これらのツールにより業務時間の大幅な軽減や、業務の質改善につながっています。

参照:富士フイルム「DX記者説明会資料」

生成AIでサポートデスクの効率化【株式会社富士通】

出典:Fujitsu HP

富士通は、selesforceの生成AIをコンタクトセンターにて導入しました。このシステムでは、質問に対する推奨返信の作成や回答文の添削等を生成AIが行ってくれます。

これにより、サポートデスクの品質向上やアドバイザーの育成の効率化を実現しました。
結果として生産性は大幅に向上し、8割以上の作業時間を削減することにつながっています。

参照:Fujitsu HP

3D-CADの設計分野での品質チェック【株式会社pluszero】

出典:+zero HP

pluszero社が保有するAI技術「AEI」に生成AIを融合させることで、3D-CADでの設計による品質チェックの自動化を実現しました。

生成AIが製品に関するCADデータ案を生成し、その案をAIシステム「AEI」により解析・自動テストします。

そして、AIが検出した製品の不適合箇所を生成AIに伝達し、修正されたCADデータを生成AIが生成し、再度テストします。このようなサイクルを繰り返すことで、設計段階で製品の不具合を検知・修正することが可能です。

このような3D-CADによるテスト工程の効率化により、作業時間を削減・品質向上を実現しました。

参照:+zero HP

車両に生成AIを搭載【メルセデスベンツ】

出典:日本経済新聞

世界的自動車メーカーであるメルセデスベンツでは、ChatGPTを搭載した生成AI車を試験提供しました。

これが一般解禁されることで、音声会話で渋滞状況や目的地に関する情報から夕食のレシピに至るまで幅広い情報を運転中に取得できます。

このほかにも、事故発生時の対応のサポートや運転習慣のフィードバック、ユーザの好みを反映させた映画などの娯楽の提供なども利用可能です。

このように生成AIを製品に搭載することで、顧客のニーズを満たす製品の生産も可能にします。

参照:日本経済新聞

生成AIを導入する上での注意点

ここでは、生成AIを製造業で導入するにあたって気をつけるべき点について紹介します。

製造業で生成AIを導入する際に気を付けるべきこと

  • 導入の目的を明確にする
  • 倫理的考慮や特定の規定の策定
  • 投資対効果を明確にする

導入の目的を明確にする

上記でも紹介した通り、生成AIには様々な活用法が存在します。しかし、他社の活用事例が自社でも同様の効果をもたらすとは限りません。

そのため生成AI導入の際には、自社が抱えている課題や問題点などを明確にし、導入目的をしぼってから導入することが重要です。

また、導入による長期的な効果などについても考慮しておけると望ましいでしょう。

倫理的考慮や特定の規定の策定

生成AIで自動化されたシステムにおいて、生成AIが倫理的問題を引き起こす可能性があります。例えば、共同研究している会社のデータや個人情報を扱う際などに起こる可能性があるでしょう。

このような問題発生を防ぐために、事前に関連する法律の順守やデータ取り扱いについてのガイドラインの策定をすることが重要です。

投資対効果を明確にする

生成AI導入には、ソフトウェアのライセンス費やデータインフラの整備、導入に伴う試験や検証が必要不可欠になります。これらの初期投資に加え、メンテナンス費や専門人材の育成も必要となります。

生成AI導入は、これらの初期投資やメンテナンスに対する費用がかかる一方、多大な利益ももたらします。

そのため、長期的な投資対効果(投資に対する利益)を導入前に明確にしておくことで、導入により損失を出すことを予防できます。

時代の波に乗ってみましょう!

生成AIは、近年様々な企業で導入が検討されていたり、すでに業務効率化など結果を出している会社もあることを紹介しました。

まだ広く流通はしていない生成AIですが、だからこそ情報を適切に収集しいち早く導入することで長期的な利益を見込めるでしょう。また、生成AIは今後確実に活用される機会が増えるといえます。

そのため、この際に一度自社で導入した際のメリットやデメリットについても検討してみるといいかもしれません。

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株式会社C And 代表取締役 / 企業の業務課題をきちんと解決できるChatGPT・生成AI活用の研修/コンサルティングのプロ。
また、前職の株式会社MIXIで培ったブランドプロモーションスキルを活かし、話題化戦略を意識した制作した生成AI活用のアニメCMは、Xにて680万インプレッションを記録。幅広い形で生成AIを活用して、企業の課題解決に貢献。