
自治体の生成AI 活用事例4選を紹介!活用方法やメリット、注意点を解説
株式会社C And 代表取締役
自治体にはAIの存在や活用が遅れているイメージを持っている方も多いです。
ですが近年、業務効率化ツールの導入が自治体業界でも進んでいます。
本記事では、ChatGPTを始めとする生成AIの活用方法や事例、導入の際の注意点を紹介します。
この記事を読み終える頃には、自治体における生成AI導入のイメージが掴めていると思います。
目次
生成AIとは

まずはじめに、生成AIとはテキスト、音声、静止画、動画などのオリジナルコンテンツを自動的に生成するAIです。プログラム、アート作品、楽曲、アニメーションなどを生成することが可能です。
生成AIと聞くとChatGPTを思い浮かべる方も多いと思います。
ChatGPTはテキスト生成に長けた生成AIツールの一種です。
質疑応答や文章作成、翻訳、コーディングなど幅広い用途で活用できます。
生成AIには画像を生成することに特化したサービスや動画の生成に特化したサービスなどChatGPT以外にも様々なサービスがあります。
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自治体における生成AIの必要性
自治体業界は、業務過多や人手不足などによる社員の負担が大きいことが課題として挙げられます。
総務省の調査によると、自治体業界の職員数は平成6年をピークに減少傾向にあります。
近年では業務過多によるモチベーションの低下で若手社員が退職してしまうケースもあり、問題視されているのです。
実際に、30歳未満の退職者数は9年間で2.7倍にも増えています。
少子高齢化による人口減少により税収が減少している現状で、既存の必要なサービスは維持しながら予算は削減しなければならないという難関な問題に直面しています。
この状況を改善するには、業務改革が必要です。
実際にAIを導入している自治体も多く、AI・RPAの導入は59%とAIの導入がかなり進んでいます。

その一方で、「導入後の効果が不明である」や「何から取り組めば良いか分からない」などAIに関する知識不足により導入が遅れていることが課題です。
自治体での生成AI 活用方法
ここでは生成AIの活用方法をいくつか紹介します。
自治体での生成AI活用方法
- 業務内容の共有
- 議事録の作成
- 市民のお問い合わせ対応
- 文章の要約、翻訳
- アイデア出し
業務内容の共有
自治体業界の業務は市民の情報やあらゆるサービスの管理など多岐に渡ります。
各業務で専門性が求められるにもかかわらず、職員間でナレッジやノウハウが十分に共有できていないケースが多くあります。 そのため、業務が属人化している傾向があり、退職や異動が起こった際に貴重なノウハウが失われてしまうリスクがあります。
そこで、生成AIを活用すればノウハウの蓄積と職員間の専門的な業務スキルの共有が可能になります。
ノウハウの蓄積と共有が可能になることで専門的なスキルを全体に広めることができるのです。
議事録の作成
生成AIを活用することで記事や議事録を自動で作成することが可能です。
どのような記事にしたいのかや言葉遣いなどの指示を出すことで生成AIがその条件に適した記事や議事録を作成します。
議事録の作成では、生成AIが会議の音声を文字に起こし、要点をAIが判断しまとめてくれることも可能なので会議が終わってすぐに議事録が完成します。
実際、令和3年度に行った「全庁業務量調査」では約8,000人の職員が年間3万時間を議事録作成を含む文字起こしに費やしていることが分かっています。
生成AIを活用し文字起こしや要約業務を効率化することで大幅な業務時間削減が見込まれます。
市民のお問い合わせ対応
自治体は毎日市民からの問い合わせも多数寄せられます。
日中のほとんどの時間を問い合わせ対応に追われている部署もあり、令和3年の「全庁業無料調査」の結果によると市民の相談・問い合わせに費やす業務時間は年間で66.7万時間であることが分かりました。
生成AIを活用することで、電話での問い合わせを自動化することが可能です。
相手の声を認識し内容を理解し、そしてその内容に適した回答を瞬時に用意します。
更に、日本語以外での言語の対応も可能なため海外の方も安心できる環境を提供します。
自治体職員の負担軽減だけでなく、市民にとってもメリットがあります。
文章の要約
自治体は業務内容の幅が広いことや、多くの情報を取り扱うことからも膨大なデータや資料を保有しています。
生成AIを活用することで、膨大な資料の内容を要約したり、条件に合う必要な情報を抽出することが可能です。
資料の中から特定の情報を見つけ出しまとめる必要がある際に、生成AIに指示を出すことで瞬時に情報を見つけ重要な箇所のみを要約します。
アイデア出し
自治体の業務は、既存のサービスを維持するだけではありません。
市民がより暮らしやすい街づくりのために、新たなサービスの提案やイベントなどを企画することも自治体職員の業務内容の一つです。
生成AIを活用すれば、状況や条件、ターゲットに応じたアイデア出しを自動で行います。
アイデア出しを行う際、まず生成AIを活用することでアイデアの基盤を作ることができるため、作業時間の効率化や質の高いサービスの提供を可能にします。
自治体業界での生成AI活用事例
東京都千代田区「Office Bot」

東京都千代田区は、Microsoft社のAzure OpenAI Serviceと連携したAIチャットボットサービス「OfficeBot」を導入しました。
OfficeBotは組織内の業務に関する問い合わせに対して、過去資料や問い合わせ内容をChatGPTが参照して分かりやすく返答することができるサービスです。
行政は業務内容の幅が広いことやそれぞれに専門性が求められることから職員の間で問い合わせが多発していることが課題でした。
業務内容に関する情報やナレッジを効率よく共有することで、何度も同じ内容を説明することや、業務内容に詳しい職員を探す手間が無くなり職員の業務過多を少しでも軽減することが期待できます。
職員の業務負担を少しでも減らすことで市民の暮らしサポートに時間を使うことができるようになり、職員にとっても市民にとってもメリットのあるサービスです。
沖縄県沖縄市 お問い合わせ対応の自動化

沖縄市では、お問い合わせ対応にAIチャットボットを導入しました。
窓口や電話では営業時間や対応に限度があり、仕事や育児で問い合わせることができない住民が多いことが課題でした。
AIチャットボットは24時間365日、手続きや届出に対しての疑問を自動で応答することできるため市民の疑問を瞬時に解決することが可能です。
営業時間に問い合わせができない方だけでなく、来所や電話せず気軽に問い合わせたい方など多くの市民の役に立っています。
さらに、日本語だけでなく英語や韓国語、中国語にAIが翻訳することもできるため海外からの移住者の利用も多く、それまで他言語の対応を行っていた職員の負担軽減にもなっています。
静岡県袋井市 記事作成や議事録要約の自動化
静岡県袋井市では市役所業務の効率化を図るため、実際の業務で生成AIを導入しました。
Microsoft社のAzure OpenAI Serviceを使った利用環境を構築し、2024年から本格的に業務への活用を開始しています。
主な活用方法は、ホームページや挨拶文の作成、文章の要約や校正、改善などの職員の業務です。
特に文章の生成に活用されており、議事録や記事作成、メール対応などによる職員の業務負担を軽減することが可能です。
千葉県君津市 職員採用AI面接サービス「SHaiN」

千葉県君津市では、職員の採用面接に対話型AI面接サービス「SHaiN」を導入しました。
SHaiNでは24時間365日世界中のどこからでも面接を受けることが可能です。
いつでも面接可能にすることで、近年増加している連絡なしに面接を辞退するケースが防げます。
さらにSHaiNでは、生成AIを活用した機能によって、受験者の回答内容を全てテキスト化し面接内容を元に評価レポートを作成してくれるため職員の業務負担を減らすことも可能です。
そのレポートを元に、対面の面接時には候補者に適した質問を投げかけたり、特徴から動機づけを行うことができます。
内定辞退の防止やモチベーションの向上、人材配置や育成などあらゆる場面で活用できるサービスです。
生成AI導入のメリット
自治体に生成AIを導入することは職員にも市民にもメリットがあります。
ここでは生成AIを導入するメリットを解説します。
自治体に生成AIを導入することのメリット
- 業務効率化と職員の業務負担軽減
- 市民サービスの利便性向上
業務効率化と職員の業務負担軽減
自治体業務は多岐にわたること、人手不足であることから、業務過多になってしまいがちです。お問い合わせ対応で1日の業務が終わってしまう部署もあります。
業務内容の幅も広く、職員間で業務内容を共有するにも時間がかかります。
これまで多くの時間を費やしていた業務が自動化されることで、大幅な業務効率化が期待できます。
生成AIは、ナレッジの共有、問い合わせの自動対応など多くの職員の業務をサポートします。
全庁業務量調査によると自治体業務の31.9%(約421万時間)は自動化することが可能です。
生成AIを活用し職員の多くの業務をサポートすることで職員の業務負担を解消することが期待されます。
市民サービスの利便性向上
生成AIの活用は市民にもメリットがあります。
事例でも紹介した問い合わせの自動対応では、市民の問い合わせのハードルを下げることができます。
問い合わせるほどの疑問でない場合、ほとんどの人が諦めてしまいますが自動対応であれば少しの疑問でも質問をしやすいです。
さらに、生成AIは翻訳も可能なため海外の方にも適切な説明を行うことができます。
生成AIを活用することで市民にとっても暮らしやすい街になるのです。
生成AI 導入のリスクと課題
生成AIを自治体に導入することは利点が多いですがその一方で、いくつかの課題もあります。
生成AIを導入する際には、導入前に以下の課題を理解し対処法を検討しましょう。
生成AI導入のリスクと課題
- 情報漏洩・権利侵害のリスク
- 初期費用コスト
- ハルシネーションへの対策
情報漏洩・権利侵害のリスク
生成AIを活用する際に注意したいのが情報漏洩のリスクです。
生成AIはクラウド上で運用されるため、業務データやユーザーが入力した情報が漏洩してしまう可能性も否定できません。
不正アクセスなどを防ぐために、アクセス権を徹底管理することやデータ保護を強化する必要があります。
生成AIを利用する際には、個人情報を入力しないよう職員や市民に情報漏洩のリスクについて説明することも重要です。
導入コスト
生成AIを導入する際には導入費用と運用費用が必要です。
導入初期にはシステムの設計や開発にかなりの投資が必要になります。
例えば、文字認識AIやチャットボット、音声認識にはそれぞれ平均1~100万円かかると言われています。
多くの費用が必要となるため、小規模な自治体では予算の制約がデメリットになる可能性があります。
尾張旭市の調査によると生成AI導入、利用の費用が年間200万円程度に収まれば、一定の費用対効果が見込めるとし、導入を進めています。
導入する際は一気に全ての生成AIを導入するのではなく必要なものから順番に導入することをおすすめします。
ハルシネーションへの対策
ハルシネーションとは、AIが事実に基づかない情報を生成することを意味します。
生成AIは、インターネット上の膨大なデータを学習して動作しますが、その全ての情報が常に正確であるわけではありません。
AIが生成するコンテンツや回答に誤情報や偏った情報が含まれる可能性があります。
生成AIは便利ですが全てを正しいと思わず、実際に自分でもその情報が正しいのかを調べる事が重要です。
生成AIを使用する際には、便利さに依存せず業務のサポートとして使用しましょう。
自治体業界に生成AIを導入してみましょう
今回の記事では、生成AIの活用方法や事例、メリット、課題までを解説しました。
生成AIは、導入することで職員だけでなく市民にも大きなメリットがあります。
課題もありますが、導入前にしっかりと対策をすることで防ぐことも可能です。
実際に生成AIを導入している自治体も多々あり、今後も増えていくと予想されます。
本記事の事例や活用方法を参考にして導入イメージを検討してみてください。
木俣太地
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