IT業界における生成AIの活用事例5選!導入効果や注意点、おすすめのツールを紹介。

IT 活用事例

株式会社C And 代表取締役

監修 木俣太地

近年、生成AIが急速に発展し、多くの業界でその可能性が注目されています。特にIT業界では、生成AIの導入により業務効率の向上や新たなビジネスモデルの創出が期待されています。

しかし、生成AIは従来のAI技術とはどのように異なり、どのような効果をもたらすのでしょうか?本記事では、IT業界における導入効果や具体的な活用事例について解説します。

生成AIとAIの違いは?

生成AIは、従来のAIとは異なり、単なるデータ処理や分析にとどまらず、新しいコンテンツを自動生成できる点が大きな特徴です。これにより、クリエイティブな分野での応用が広がっています。

例えば、文章、画像、音楽など、様々な形式のコンテンツを生成することが可能です。詳細な違いについては以下の記事をご参照ください。

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IT業界における生成AIの導入効果は?

開発プロセスの効率化

IT業界では、ソフトウェア開発プロセスが常に迅速かつ高品質であることが求められます。生成AIは、プログラマーをサポートする画期的なツールとして、このニーズに応えています。

たとえば、コード自動生成ツールを活用すれば、煩雑なコード記述を短時間で行うことが可能です。

さらに、コードレビューやデバッグ作業をAIが自動で実施し、バグの特定や修正提案を行うことで、開発スピードと品質の向上が同時に実現します

また、プロジェクトの初期段階では、生成AIを使って要件定義に基づくプロトタイプやモックアップを作成することで、クライアントやチームとのコミュニケーションも効率化されます。これにより、開発工程全体の短縮と迅速な市場参入が可能になります

サービスのパーソナライズ化

現代のIT業界において、顧客体験のパーソナライズは競争力を維持するための重要なポイントです。生成AIは、膨大なユーザーデータを基に、個別化されたサービスを実現するための強力なツールとなります。

例えば、カスタマーサポート分野では、自然言語処理(NLP)を活用したAIチャットボットが、ユーザーごとに異なる質問や問題に的確に対応し、迅速な解決を提供します。

また、ECサイトやSaaS企業では、生成AIを活用して個人に最適化されたレコメンデーションを行い、ユーザーエンゲージメントを向上させています

コスト削減

IT業界における生成AIの導入は、企業全体のコスト削減を促進します。特に、開発リソースの最適化や業務の自動化によるコスト圧縮が顕著です。

例えば、開発者が行うルーティン作業を生成AIが肩代わりすることで、チームの生産性が向上し、少人数でのプロジェクト運営が可能になり、人件費の削減が実現します

さらに、生成AIを使った自動コンテンツ生成は、外部委託の必要性を低減し、長期的なコスト削減効果をもたらします。こうした効率化によって浮いたリソースを、新規事業開発や事業拡大に再投資できる点も大きなメリットです。

IT企業での生成AI活用事例5選

IT業界では、大手企業を中心にすでに生成AIを導入している企業が複数あります。ここではIT業界での生成AI活用方法を、具体例を挙げながらご紹介します。

リクルート

リクルートが提供する「AI壁打ちくん」は、アイデアや課題を整理したり、議論のきっかけを作ったりするために開発されたAIアシスタントです。まるで同僚やコンサルタントと対話するかのような感覚で、プロジェクトの進行や意思決定を支援してくれます。

「AI壁打ちくん」の最大の特長は、ユーザーが投げかけた問いや課題に対して多角的な視点で提案やフィードバックを返してくれることです

たとえば、新しい事業アイデアを思いついた際に、そのコンセプトをAIに伝えるだけで、対象ユーザーや市場トレンドに基づいたアドバイスやリスクの指摘が得られます。また、企画書の下書きを生成したり、プレゼンテーション資料のアイデアを出したりするなど、日々の業務でも活用可能です。

さらに、「AI壁打ちくん」は生成AIの特性を活かして柔軟かつ創造的な応答を提供します。単なるQ&Aではなく、ユーザーの意図を汲み取りながら、具体的な提案や改善案を繰り出すため、アイデアをより洗練された形に仕上げるサポート役として重宝されています

参照:「新規事業、思いついたらいつでもサポート! リクルート「AIかべうち君」開発秘話」

LINEヤフー

LINEヤフーは、生成AIの活用を積極的に推進し、消費者向けサービスを中心に16件の生成AI機能を導入しています

例えば、「PayPayグルメ」ではChatGPTプラグインを導入し、ユーザーに対してより自然な対話形式での情報提供を実現しています。

また、従業員約2万人に対して独自のAIアシスタント「LY ChatAI」を提供し、業務効率化を図っています。

さらに、エンジニア向けには、「GitHub Copilot」を導入し、約10%から30%の生産性向上を実現しています。 GitHub Copilotは、コードの自動補完や提案を行うツールで、エンジニアの日常業務において定型的なコードの記述を効率化し、開発スピードを向上させています。

参照:「LINEヤフー、個人向けサービスを中心に16件で生成AIを活用 従業員約2万人に生成AIアシスタントを提供」

楽天グループ

楽天グループ株式会社は、メッセージングアプリ「Rakuten Viber」において、OpenAI社の生成AI技術を活用した新機能「AIチャットサマリー」の提供を開始しました。この機能は、グループチャットの未読メッセージを瞬時に要約し、ユーザーが効率的に内容を把握できるよう支援します

具体的には、未読メッセージが7件から100件の範囲で要約を行い、箇条書き形式で重要なポイントを提示する仕組みです。これにより、大量のメッセージを遡る手間を省き、重要な情報をすばやく確認することが可能となります

参照:「Rakuten Viber」、生成AIを活用してグループチャットの未読メッセージを要約する新機能「AIチャットサマリー」の提供を開始

メルカリ

メルカリは、出品時に写真を撮影しカテゴリーを選択するだけで、商品説明や価格などの情報が自動入力される新機能「AI出品サポート」の提供を開始しました。 この機能により、最短3タップで出品が完了し、ユーザーの負担が大幅に軽減されます

「AI出品サポート」は、商品写真とカテゴリー情報を基に、AIが自動的に商品説明、状態、販売価格などを入力します。ユーザーはこれらの情報を確認・編集することが可能で、出品作業がよりスムーズになります。この機能は、初心者から頻繁に出品を行うユーザーまで、幅広く利用できます。

メルカリは、ユーザーからの「出品時の商品情報の入力に負担を感じる」といった声を受け、出品体験の向上を目指して「AI出品サポート」を導入しました。これにより、商品説明や価格設定を考える手間が省け、より手軽に出品が可能となります

参照:メルカリ、「AI出品サポート」の提供を開始。出品体験をさらに簡単にアップデート

マネーフォワード

株式会社マネーフォワードは、「マネーフォワード クラウド会計」および「マネーフォワード クラウド確定申告」とChatGPTを連携させた新サービス「マネーフォワード クラウド 会計 for GPT」を発表しました。このサービスでは、会計データを基にした財務・経営レポートの自動生成や、改善提案を行います

このサービスは、ChatGPTの「GPT Store」上で提供され、対象は「マネーフォワード クラウド」シリーズとChatGPTを利用しているユーザーです。ユーザーは簡単な指示を入力するだけで、経営に役立つレポートを生成でき、企業の財務分析や経営判断を効率化できます

参照:『マネーフォワード クラウド』、「マネーフォワード クラウド 会計 for GPT」を提供

IT業界で生成AIを使用する際の注意点

誤った情報の生成リスク

IT企業で生成AIを活用する場合、AIが生成したコードや仕様書、分析結果などに誤りが含まれるリスクがあります

たとえば、生成AIが提案したコードが動作はするものの、セキュリティ面で脆弱性を抱えている場合、それを見逃すとシステム全体に影響を及ぼす可能性があります。また、不正確なデータ分析結果がプロジェクトの方向性を誤らせることも考えられます。

これを防ぐには、生成された出力を必ずエンジニアや専門スタッフがレビューし、内容の正確性や妥当性を確認するプロセスを整備することが重要です。生成AIの結果を鵜呑みにせず、人間の専門知識を組み合わせて活用することが成功の鍵です

情報漏洩のリスク

生成AIの多くは外部のAPIやクラウドサービスを使用するため、入力したデータが外部サーバーに送信されることで、機密情報や個人情報が漏洩するリスクがあります。特に、顧客データや内部情報を扱うIT業界では、このリスクへの対応が不可欠です。

このリスクを軽減するには、使用するAIサービスのデータセキュリティポリシーを確認し、機密情報の入力を最小限にする運用ルールを設定することが重要です。また、従業員への教育を徹底し、意図せぬ情報漏洩を防ぐ体制を整備することも求められます

すぐにできるIT業界での生成AI活用方法

IT業界において生成AIを効果的に活用するためには、業務やプロジェクトの目的に合ったツールを選定することが重要です。

コード生成に特化したツールや、文章作成やリサーチを支援するツールなど、ニーズに応じた最適なAIツールを活用することが求められます。

以下では、目的に応じた生成AIツールをご紹介します。それぞれのツールの特徴を理解し、自社の業務プロセスに適したツールを取り入れることで、生産性の向上が期待できます。

コード生成ツール

GitHub Copilot

GitHub Copilotは、AIを活用したコーディング支援ツールで、開発者の生産性を向上させることを目的に設計されています。このツールは、Visual Studio Codeの拡張機能であり、リアルタイムでコードを提案する機能を中心に、プロジェクト全体の効率化をサポートします

GitHub Copilotの主な特徴は、コード補完と自然言語による指示機能です。開発者がコードやコメントを入力すると、それを基に次に書くべきコードを提案します。さらに、自然言語で指示を出すことで、特定のタスクに必要なコードを自動生成できます

また、「GitHub Copilot Chat」を利用すれば、AIとの対話形式でコーディングを進めることができます。この機能は、初心者が疑問を解決したり、コードレビューを行ったりする際に特に役立ちます。

リンクはこちら:GitHub Copilot

Cursor

Cursorは、AIを搭載した次世代のコードエディタで、プログラミング作業を効率化するためのツールです。ユーザーの指示に基づいてコードを自動生成し、繰り返し作業を減らすことで開発者がより重要なタスクに集中できるようサポートします。

また、ChatGPTを統合しており、コーディング中の質問や疑問にリアルタイムで対応するほか、自動デバッグ機能でエラーを検出し、修正案を提示します

CursorはVisual Studio Codeを基に設計されており、既存のプロジェクトをスムーズに移行可能です。また、日本語対応もしているため、国内の開発者にも使いやすい設計になっています。無料プランから利用でき、有料プランではさらに多機能なサポートを受けることができます。

リンクはこちら:Cursor

リサーチツール

Genspark

Gensparkは、質問を投げると、AIが自動で検索して、リサーチしてくれるサービスです。この仕組みにより、複雑な質問や多面的な情報収集がスムーズに行えます。

特徴的な機能としては、AIが自動でリサーチ結果のレポート「Sparkpage」を作成してくれます

レポートの内容をチャットボットで質問してAIが回答してくれる機能もあり、さらに理解を深めることも可能です。

さらに、Gensparkはファクトチェック機能を備えており、情報の信頼性を自動的に評価します。現在はベータ版として無料提供されており、情報収集や分析を効率化するツールとして、IT業界で広く活用されています。

リンクはこちら:Genspark

Perplexity

Perplexityは、AIを搭載した対話型検索エンジンで、ユーザーが自然言語(話し言葉)で質問を入力すると、インターネット上の情報を基に回答を生成します

このツールは、従来の検索エンジンと異なり、AIが直接回答を生成するため、特にニュースやトレンドといった最新情報の取得に優れています。また、回答には必ず情報源が表示されるため、信頼性を確認しやすく、誤った情報提供を防ぐ助けとなります

さらに、PDFやテキストファイルをアップロードし、その内容に基づいた質問ができる機能や、検索結果をテーマごとに保存・共有できる「コレクション機能」も搭載されています。

リンクはこちら:Perplexity

テキスト生成ツール

ChatGPT

ChatGPTは、OpenAIが開発した生成AIで、自然な文章を生成する能力を持ち、IT業界におけるさまざまな業務の効率化と生産性向上を支援します

特に、ChatGPTの文章生成機能は、IT業界の日常業務で多くの場面に活用できます。例えば、プロジェクトの要件定義や設計資料のドラフト作成、または技術文書の整理など、正確でわかりやすい文章が求められるタスクを迅速に行うことができます。

さらに、プログラミングチームでは、エラーメッセージやコードの注釈説明を作成したり、開発者向けのリファレンスを効率的に生成したりすることも可能です。

また、文章生成を軸にしたカスタマーサポート業務でも活用が進んでいます。ChatGPTは、FAQやサポートページのコンテンツ作成をサポートし、顧客の質問に応答する自動化ツールとしても利用できます。これにより、サポート対応の迅速化と質の向上が実現され、顧客満足度を高める効果が期待されます

リンクはこちら:ChatGPT

Claude

Claudeは、IT業界の文章作成業務を強力に支援するツールです。高い自然言語処理能力を持ち、仕様書、提案書、技術文書など、複雑で正確さが求められる文章を効率的に作成できます

特に、最大20万トークン(約15万文字)までの長文を一度に処理できるため、大規模なレポートや詳細なドキュメントの生成に最適です。

また、Claudeはユーザーの入力内容に基づき、簡潔でわかりやすい要約や文章構成の提案を行います。

例えば、プロジェクトの進捗レポートを短時間で作成したり、議事録を整理して共有するなど、業務の効率化をサポートします。さらに、IT業界で頻繁に利用される技術用語や文脈にも対応可能なため、専門性の高いドキュメント作成にも適しています

リンクはこちら:Claude

まとめ

生成AIは、IT業界における業務効率化や生産性向上において、欠かせない存在となりつつあります。コード生成やリサーチ、テキスト生成といった多岐にわたる用途で、その活用範囲は急速に広がっています。

しかし、生成AIを効果的に活用するためには、技術やツールの特性を正しく理解し、自社の業務ニーズや課題に合ったツールを選定することが重要です。さらに、運用リスクを認識し、適切なガバナンスや人間の介入を組み合わせることで、生成AIのポテンシャルを最大限に引き出すことが可能になります。

これからのIT業界において、生成AIは単なる技術革新の一部ではなく、競争優位性を生み出す戦略的な資産となるでしょう。適切な導入と運用を通じて、生成AIを最大限活用し、より効率的で創造的な業務プロセスを構築することが、今後の成功を左右する鍵となります

株式会社C And 代表取締役 / 企業の業務課題をきちんと解決できるChatGPT・生成AI活用の研修/コンサルティングのプロ。
また、前職の株式会社MIXIで培ったブランドプロモーションスキルを活かし、話題化戦略を意識した制作した生成AI活用のアニメCMは、Xにて680万インプレッションを記録。幅広い形で生成AIを活用して、企業の課題解決に貢献。