教育業界の生成AI活用事例5選を紹介!生成AI活用のメリットや注意点も解説

教育 活用事例

株式会社C And 代表取締役

監修 木俣太地

近年ChatGPTをはじめとする生成AIによる業務や作業の効率化が身近なものになってきています。

しかし、生成AIに関して正しく理解している人はまだまだ少ない印象です。
また、教育業界でどのように生成AIが活躍するのか想像がつかないという方も多いでしょう。

本記事では、教育業界における生成AIの重要性や活用方法、活用事例などについて解説します。
この記事を読み終わる頃には生成AI導入のイメージが掴めていると思います。

生成AIとは?

まずはじめに、生成AIとはテキスト、音声、静止画、動画などのオリジナルコンテンツを自動的に生成するAIです。プログラム、アート作品、楽曲、アニメーションなどを生成することが可能です。

生成AIと聞くとChatGPTを思い浮かべる方も多いと思います。
ChatGPTはテキスト生成に長けた生成AIツールの一種です。
質疑応答や文章作成、翻訳、コーディングなど幅広い用途で活用できます。

生成AIには画像を生成することに特化したサービスや動画の生成に特化したサービスなどChatGPT以外にも様々なサービスがあります。

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教育業界での生成AI活用方法

生成AIは教育業界でも幅広い活躍が期待されています。
以下が教育業界での生成AI活用方法です。

教育業界での生成AI活用方法

  • 生徒の質問に24時間対応
  • 記述問題の自動採点
  • 英語学習のサポート
  • 教師の授業準備や教材作成のサポート
  • 保護者などのメール対応自動化

生徒の質問に24時間対応

生成AIを活用することで24時間生徒からの質問に対応することが可能です。
生成AIは、データの中から正解を見つける従来のAIとは異なるのでどんな質問にも柔軟に対応できます。

これまで質問は教師が対応できる時間のみだったため、生徒が質問をするために順番待ちをしたり、疑問点を抱えたまま自宅での学習を行っていたりしていました。
ですが、生成AIを活用すると疑問はその場で解決できるようになるため、生徒は学習時間をより効率的に使うことができます。

生徒だけでなく教師も質問に対応する時間が短縮されることから業務の負担が少なくなり両者にメリットがあります。

英会話練習のサポート

生成AIは多言語での対応を得意とするため言語学習にも活用する事ができます。

文法やリスニングなどはテキストに沿って進めることが可能ですが、英会話は教師のスキルによって差が出やすいです。
生成AIを導入すると、生徒の回答や質問に合わせた対応をしてくれるため全生徒に質の高い英会話練習を提供することが可能です。

実際に、学習塾と英会話塾を別々で通っている方も多く、学校や学習塾では受験に向けた学習を重視し英会話などは重視されていない傾向にあります。
ですが、英会話はリスニング、記述、文法全てを理解する上で最も重要ですし汎用性も高いです。
生成AIを活用し英会話の学習を可能にすることで他の学習塾や教育サービスと比較すると圧倒的な強みにもなります。

記述問題の自動採点

記述問題の採点は、採点者の主観や採点基準によって点数が変わってしまうため公平性・確実性に欠けると言われています。
ですが、生成AIを活用すればAIによる自動採点が可能になります。

解答を写真に撮って送信するだけでAIが自動で採点、フィードバックをもらうことも可能です。
AIが採点することで公平性が保たれ採点者の基準による疑問は減るでしょう。

また、近年では記述問題の採点にAIを導入している試験もあるため、実際の試験対策にもなるでしょう。
記述問題が自動採点できるようになることで自宅で記述問題の練習ができる、テストの採点時間の短縮など生徒と教師両方にメリットがあります。

教師の授業準備や教材作成のサポート

生成AIは教師の授業準備や教材作成にも活用できます。
生成AIはユーザーの指示に従って答えを生成するツールです。

例えば、「世界史の〇〇〜〇〇の範囲での授業の構成を考えて」や「数学の〇〇の単元の分かりやすい教え方を考えて」などと指示を出すと生成AIが構成や教え方を解答してくれます。
生成AIの回答を基に準備や教材の作成を行うことで、一から準備を行うよりも大幅に準備時間を短縮する事ができます。

保護者などのメール対応自動化

教師の業務の中で負担の一つとなっているのは「保護者などに対してのメール対応」です。

内容の異なるメールに返信を考えるというのも負担になりますが、言葉の受け取り方次第で問題になってしまう可能性もあるので慎重に検討する必要があります。
特に受験生の担当であると保護者からの対応に追われることも多々あり、多くの教師の負担となっています。

その際に生成AIを活用すれば、それぞれのメール内容に合う返信を考えてくれます。
メール対応に割く時間が大幅に短縮されますし、教師の精神的ストレスや負担も軽減されるでしょう。

教育業界の生成AI活用事例

前のセクションでは生成AIの活用方法を紹介しました。
ここでは実際に教育現場に生成AIを導入している事例をいくつか紹介します。

学研:ChatGPTを使用した個別アドバイス

株式会社学研ホールディングスのグループ会社、株式会社学研メソッドはOpenAI社のChatGPTを活用した学研オリジナル学習システム「GDLS~Gakken Digital Learning System~」の提供を開始しました。

GDLSは生徒のレベルや正誤結果によって適切な難易度の問題を出題し一人ひとりの苦手に寄り添うサービスです。
毎日の学習を継続するということを目的としており、生徒の学習進捗状況に応じて生成AIが毎日異なるアドバイスや励ましの言葉をかけてくれる機能付きです。
さらに、学習の進捗状況に応じてAIが宿題を自動生成し、生徒の苦手ややる気に向き合います。

GDLSでは生徒の学習のサポートによる学力の向上だけでなく学習意欲の向上も期待できます。

ベネッセ:個別学習サポート、自由研究のテーマ決めのアドバイス

ベネッセコーポレーションは、「進研ゼミ小学講座・中学講座」で生成AIを活用した学習支援サービス「チャレンジAI学習コーチ」を導入した。
「チャレンジAI学習コーチ」は学習に関する分からない部分をAIキャラクターに質問することでいつでもどこでも疑問を解決してくれるサービスです。
このサービスでは進研ゼミの学習だけでなく学校の宿題に取り組む際にも活用できます。

以下は、チャレンジAI学習コーチでのAIと生徒のやりとりです。


その他にも夏休み限定で「自由研究お助けAI」を導入しました。
「自由研究お助けAI」では自由研究のテーマが決まっていない生徒に対して生成AIが生徒に合う自由研究のテーマを一緒に探してくれるサービスです。

両方のサービスに共通してAIが問題や悩みの解答を教えてあげるのではなく、自身で解答にたどり着けるように対話を通して視点を広げてあげます。
分からないと思った部分をすぐに解決する事ができるので子供の学習環境に大きな変化を与えています。

ナガセ:英語記述問題の自動採点

東進ハイスクール・東進衛星予備校を運営する株式会社ナガセは、Azure OpenAI Serviceを活用した自動英作文添削講座「英作文1000本ノック」を導入しました。

「英作文1000本ノック」では最新の生成AIを活用し、基礎から難関大学レベルの和文英訳を即時に実行できるシステムで教師の添削にかかる負担を大幅に減らし、生徒もいつでも英作文学習に取り組む事ができるのが特徴です。
さらに、添削だけでなく文法に関するアドバイスも可能で、その場で疑問点を解決することができます。

生成AIの導入で従来の英作文学習と添削指導に大きな変化を与えています。

Z会:英語のスピーキング練習

通信教育「Z会」を運営する増進会ホールディングスは、Azure OpenAI Serviceを活用した英語のスピーキングを学習する「AI Speaking」を導入しました。

対象者は中学生で、日常生活のさまざまな場面をテーマとし、そのテーマに沿ってAIと会話を行うことが可能です。AIの返答は中学生レベルになるように設定されているため英語力の差を感じる心配はありません。

また、会話相手がAIであれば人前で英語を話すことに対する恥ずかしさもないでしょう。
英会話は教師のスキルによって差が生まれやすいですがAIを活用することで場所や環境を問わず質の高い教育を提供できます。

東北大学:教師の業務負担の削減

東北大学ではChatGPTを活用し、システムの運用業務や資料作成、キャッチコピー作成などを自動化しました。

大学の資料作成や広報業務などで活用されており、特に広報業務では作成から読み上げまで一貫してAIが業務を代わりに行います。
業務の効率化で職員の業務時間を削減し業務過多を解消する狙いです。

ChatGPTの活用方法はまだまだ幅広いので今後もさらなる業務効率化が進むことが期待できます。
現時点での主な対象者は職員ですが、今後は教育や研究への応用展開も視野に入れています。

生成AI導入のメリット

教育現場に生成AIを導入することは教師にも生徒にもメリットが多いです。
ここでは生成Aを導入することのメリットを解説します。

生成AI導入のメリット

  • 教師の業務負担軽減
  • コストの削減
  • 創造性や思考力の促進
  • 場所を問わず質の高い教育を提供

教師の業務負担軽減

先述した通り、生成AIは授業準備や教材作成、自動採点など多くの教師の業務をサポートします。

生成AIのサポートにより教師は生徒との対話や指導により多くの時間を割けるため、教育の質を向上させる事が可能です。
生成AIを活用したメール対応の自動化により、保護者からのクレームなどの対応に追われることも少なくなるでしょう。

近年問題視されている教育現場の業務過多による教師の精神的ストレスも軽減されることが期待できます。

コストの削減

生成AIの活用により、自動採点、資料作成、24時間質問回答などが可能になり、全体的に運営コストを削減できます。
特に、業務の効率化による職員の人件費削減が見込めます。

全ての業務をAIが代替することはできませんが、AIの活用で質の高い教育を生徒に届ける事ができるため求められる教員のレベルも上がるでしょう。
コストを削減しながらもレベルの高い教育を提供できるのは大きなメリットです。

効率化によって生まれた時間や資金を他の重要な業務に再分配することもできるため、生成AIの活用は有益な投資と言えます。

生徒の創造性や思考力の促進

生成AIは生徒の創造性や思考力を促すツールとしても機能します。
生成AIに疑問点に関する質問をすると、あらゆる視点や解釈の回答をします。
新たな視点での回答を学ぶことができることで創造力を伸ばすことが可能です。

生成AIは質問に対する回答を用意するだけでなく実際に生徒と討論を行うことも可能です。
さらに、設定とお題を提示すると生成AIだけで討論を進めることもできるので、生徒はあらゆる視点から学び、自らの思考力を鍛えることが期待されます。

場所を問わず質の高い教育を提供

生成AIによるリアルタイムで質問に答える学習プラットフォームを導入することで、地域や経済的に質の高い教育を受けることが難しい生徒にも質の高い教育を提供することが可能になります。

同じ学習塾でも地域によって、教師のスキルに差があることから同じ質の教育を提供することは困難と言われていました。

生成AIは教育においてリモート学習や自己学習において活躍が見込めます。そのため、どこにいても質の高い教育を受けられる環境が整うのです。

課題と懸念点

生成AIを教育現場に導入することは利点が多いです。
その一方で、いくつかの課題や懸念点もあります。
生成AIを導入する際には導入前に以下の課題を理解し対処法を検討しましょう。

生成AI導入の課題と懸念点

  • 偏った情報や誤情報のリスク
  • 情報漏洩のリスク

偏った情報や誤情報のリスク

生成AIは、インターネット上の膨大なデータを学習して動作しますが、その全ての情報が常に正確であるわけではありません。
AIが生成するコンテンツや回答に誤情報や偏った情報が含まれる可能性があります。
生徒が誤った知識を正しいと思い込んで学んでしまう危険性があるのです。

生成AIは万能ですが全てを正しいと思わず、実際に自分でもその情報が正しいのかを調べる事が重要です。
生成AIを使用する際には、便利さに依存せず学習のサポートとして使用しましょう。

情報漏洩のリスク

生成AIを活用する際に注意したいのが情報漏洩のリスクです。
生成AIはクラウド上で運用されるため、学習に使われたデータやユーザーが入力した情報が漏れる可能性があります。

不正アクセスなどを防ぐために、アクセス権を徹底管理することやデータ保護を強化する必要があります。
生成AIを利用する際には、個人情報を入力しないよう生徒や教師に情報漏洩のリスクについて説明することも重要です。

教育現場でも生成AIを活用してみましょう

今回の記事では、生成AIの活用方法や事例、メリット、課題までを解説しました。

生成AIはまだまだ未知な存在なので導入に対して不安に感じる方も多いと思います。
ですが、導入することで生徒だけでなく教師にも大きなメリットがあります。
課題もありますが、導入前にしっかりと対策をすることで防ぐことも可能です。

実際に生成AIを導入している教育サービスも多々あり、今後も増えていくと予想されます。
本記事の事例や活用方法を参考にして導入イメージを検討してみてください。

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