建設業界の生成AI活用事例6選!生成AIに可能な業務や導入の注意点も解説

建設 活用事例

株式会社C And 代表取締役

監修 木俣太地

昨今話題の生成AIですが、その真価を発揮するのはビジネスにおける利用ともいわれています。ビジネスに生成AIを導入すると効率的に業務がこなせるようになり、大幅な業務改善が可能なためです。

特に建設業界はデータをもとに分析することやゼロから作り上げることの多い職種のため、生成AIの活用範囲が広い業界です。

本記事では活用事例を中心に建設業界における生成AIの活用法について紹介しているので、生成AIの導入を検討している方はぜひご覧ください。

生成AIとは

生成AIとは、大量のデータから学習して様々な形式のデジタルコンテンツを自動的に作り出す技術を指します。テキスト生成や画像生成、動画生成や音声生成など、生成可能なものは多岐にわたります。

生成AIの中でなじみ深い「ChatGPT」はテキスト生成を行う生成AIツールの一つです。「ChatGPT」などのテキスト生成AIは、入力したテキストに基づいてAIが文章を自動で生成します。

このように生成AIは、こちらからの指示文に合わせてほしいテキストや画像など全く新しいものを自動で作り出してくれる大変便利なツールなのです。

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建設業界で生成AIを導入すべき理由

建設業界は、かなり生成AIと相性の良い業界です。というのも、建設業界の業務フローの中には設計や工事計画、安全対策などのデータをもとに予測することが必要な業務が多く、生成AIを活用できる領域が広いからです。

人間が一から考えていた業務も、生成AIを使えばいくつか案を出してくれたり考えをめぐらすヒントを提供してくれたりと、効率的に進めることができます。人手不足や高齢化が問題視されている建設業界において、生成AIを導入することでより効率的に業務を進めることは業界の課題解決の一助にもなるのではないでしょうか。

ここからは建設業界において具体的にどのように生成AIを導入することができるのかについて言及します。

建設業界の生成AI活用事例6選

ここでは実際に企業がどのように生成AIを導入しているのか、具体的な事例を6つご紹介します。

スケッチから様々なファサードデザインを提案【大林組】

大林組はSRIと共同でスケッチや3Dモデルから様々なファサードデザインを提案できるAI技術AirCorbを開発しました。

建物の顔となるファサードデザインを顧客に提案し、対話することで実際の建物のイメージについて合意を図るわけですが、従来は設計者がアイデア出しからデザイン案の作成まで手作業で行っており、かなりの時間と労力を要していました。しかし、AirCorbはスケッチ3Dモデルからいくつかのファサードデザイン案を提案してくれるので、これらの業務を短縮できます。

参照:大林組「建築設計の初期段階の作業を効率化する「AiCorb®」を開発

高精度な建設コスト予測【西松建設】

近年物価変動が激しく、建設コスト予測は大変難しいです。西松建設が導入したxenoBrainは経済予測を行う生成AIです。xenoBrainは、どんなニュースや統計に影響を受けているのかまで説明してくれるなど、経済レポートも生成します。

建設コストを予測するだけでなく、材料の価格変化も追うことで価格上昇に備えて早めに発注するなど、様々な場面で経済的判断材料として利用できます。人間の予測よりはるかに多くのデータをもとにより正確な予測をすることができるのが生成AIを導入する魅力といえるでしょう。

参照:xenoBrain「建設業界の物価変動を経済予測AIで先読み

従業員が利用できる安全な対話型AI【鹿島建設】

鹿島建設は、自社専用の対話型AI「Kajima ChatAI」を構築し、国内外のグループ会社の従業員も含む約2万人を対象に自由に社内で使えるよう設計しています。

「Kajima ChatAI」は入力した情報が外部の学習に使用されない安全な環境となっており、ChatGPTと同等のAIモデルです。

利用用途は多岐にわたり、情報収集・分析、アイデア出し・企画書、議事録、メール代筆、英語や中国語の翻訳、プログラミングなどに利用できます。「丸一日かかるようなコードを書く作業が数十秒で済まされる」といった効果を感じる声が挙げられていました。

参考:鹿島「KAJIMAダイジェスト Kajima ChatAI

リノベーションのイメージ画像を生成【株式会社mign】

リノベーションなどの際、対象となる元々の物件の画像や間取りをもとにデザイン案を作成し、顧客の要望に合わせて調整していく必要があります。設計者は多くのデザイン案を作成するのにかなりの手間と時間がかかってしまいます。

株式会社mignが開発した生成AI「renorf」は、元々の画像のデザインのテイストを変更した画像を生成することができます。この「renorf」を活用することで、デザイン提案を作成する手間・時間を減らすことができるのです。

株式会社mignはこれ以外にも「anosite for disaster」「piqpos」などといった建設業界で利用可能な多くの生成AIを開発しています。

参考:株式会社mign「renorf

建設現場の安全対策の提案【スパイダープラス株式会社】

安全対策は作業者の経験や知見に依存する部分が多く、担保が難しいことや、安全対策の形骸化により安全意識が低下しがちなことが課題となっていました。

そこで、スパイダ―プラス株式会社が開発したのは、ChatGPTを活用した「AI支援機能」です。「AI支援機能」は日ごとに注意すべき安全対策の提案をしてくれます。作業者はChatGPTからの提案を参考にした安全対策を実行できるようになるのです。

このように生成AIを用いることで、より確実性のある安全対策を講じることが可能になるでしょう。

参考:PR TIMES「スパイダープラス、建設現場の安全品質向上にChatGPTを組み込み

リアル空間の状況変化・異変をチャットで報告【MODE, Inc.】

MODE, Inc.は、リアル空間の状況変化をチャットで報告したり、異変を察知して報告したりすることが可能な対話型生成AI「BizStack AI」を開発しました。

対話型AIは人間が送った質問に対して答えてくれるのが一般的ですが、「BizStack AI」では、リアル空間の情報を常にモニタリングし、人間が知るべき異変があった場合など適切なタイミングで自動的に会話を始めてくれるのが特徴的です。この生成AIを使えば、対話形式で必要な情報を得られるため、現場などPCを使えない環境でも現場データを活用できるようになります。

参考:PR TIMES「リアル空間の環境変化をチャットで報告!IoTプラットフォーム「BizStack」に対話型生成AIを搭載 #IVSPRWeek

建設業で生成AI活用が可能な業務

建設業界の中で、生成AIの導入によって効率化が進むと思われる業務を4つご紹介します。

設計業務

生成AIは、過去の建築物のデザインや構造データを元に、新しい建築物の設計を提案することが可能です。一から設計図を書くよりも生成AIの提案を参考に進めたほうが効率的に業務を進められます。

また、画像生成AIを使用すれば、顧客との設計打ち合わせを行う際等に使用する「住宅のイメージ図」を作成することもできます。

工事計画

建設業の中でも特に施工管理などでは全体の工事計画(工程、予算など)を立てる業務があります。工事計画は、人員や予算、設計図など数々の要素をもとに作り上げなくてはなりません。また、今までの経験からより正確な工事計画を作成する必要があります。

このようにデータの分析を伴う予測はAIの得意分野です。多くのデータをもとに工事計画を生成することが可能になります。

安全対策

安全対策は作業員や顧客のことを守るためにも最も重要な業務の一つです。多くのリスクを想定し、それらに対して対策を講じる必要があります。ただし、人が行う安全確認は経験や知見に依存するため属人化してしまうことや安全対策が形骸化してしまうことが問題視されてきました。

生成AIは膨大な工事のデータをもとに、正確に漏れなくリスクを指摘し、それに対する安全対策を提案してくれます。生成AIのこうした活用法によって、より確実な安全対策が可能になるのです。

人材育成

建設業界においては、経験が重要であるという背景も影響し、人材育成は重要かつ困難な業務の一つです。経験をもとに臨機応変に対応すべき専門性の高い業務内容に関しては、知識を伝えることはかなり難しいでしょう。

そこで、今までの経験をもとに培ったナレッジをAIに学習させることで、場合に応じて必要な情報をチャットなどでAIが答えてくれるシステム人材育成に活用することが有効な手法だと考えられています。

生成AIを導入する際の注意点

ここまで業務を効率的に進めることのできる生成AIについて解説してきましたが、生成AIを導入する際にはリスクも伴うことも知っておかなければなりません。ここでは、生成AIを導入する際の注意点を3つご紹介します。

情報漏えい

生成AIはユーザーが入力したデータを学習に利用します。そしてそのデータは、代わりに他の誰かのプロンプトに答えるために使用されるかもしれないのです。よって、個人情報や企業の機密情報を入力し、情報が流出してしまう危険性があります。

これを防ぐためには、生成AIツールなどへ機密情報などを入力しないようにすることが必要です。企業で導入する場合には、生成AIのアクセス権を制限したり、社内での使用ルールを策定すると良いでしょう。

誤情報の生成

生成AIは事実に基づかない誤情報を生成する危険性もあります。出力結果に誤情報が含まれている、あるいは指示と合わないコンテンツが生成されるなどの場合があります。

これは、生成AIが蓄積された学習データに基づいてコンテンツを生成するために、学習データが誤っていた場合などに起こり得ます。対策として、AIに与えるデータを多様化させることが重要です。

ただし、どんなに精度の高い生成AIであっても構造上誤情報を生成する可能性があるため、人間がAIが生成した内容を確認・編集するプロセスを標準化することが大切です。

著作権の侵害

生成AIのリスクとしてよく挙げられるのは著作権の侵害です。基本的には生成AIによって作られた文章や画像は、思想又は感情を創作的に表現したものではないため著作物には該当しないとされています。

しかし、生成AIによる表現が特定の作品などに酷似している場合など、著作権侵害にはならずともレピュテーションリスクはあるため、生成されたもののチェックを行う必要があります。

まとめ

本記事では建設業界における生成AI活用のヒントをお伝えしました。生成AIを利用すれば、業務の効率化が期待されるため、建設業界の慢性的な課題である人手不足を解決する有効的な手段であるといえるでしょう。

本記事が生成AIの導入を検討していただけるきっかけとなればと願っております。

株式会社C And 代表取締役 / 企業の業務課題をきちんと解決できるChatGPT・生成AI活用の研修/コンサルティングのプロ。
また、前職の株式会社MIXIで培ったブランドプロモーションスキルを活かし、話題化戦略を意識した制作した生成AI活用のアニメCMは、Xにて680万インプレッションを記録。幅広い形で生成AIを活用して、企業の課題解決に貢献。