
ビジネスの課題解決に必須!MECEの活用法と生成AIを使った効率的なチェック方法
株式会社C And 代表取締役
ビジネスの現場では、「抜け漏れのない戦略」「論理的な意思決定」「効率的な業務改善」が求められます。しかし、これを実現するのは簡単ではありません。そこで重要になるのが「MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)」の考え方です。
MECEを適切に活用することで、マーケティング戦略の立案、事業企画、プロジェクト管理、データ分析など、さまざまな場面で論理的かつ整理された意思決定を行いやすくなります。さらに、生成AIを活用すれば、MECEのチェックをよりスピーディーかつ精度高く行うことができます。
本記事では、MECEの基本概念からメリット、そして生成AIを使ったMECEチェックの方法まで、具体例を交えながら詳しく解説します。
目次
MECEとは何か?ビジネスにおける重要性とは
MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)は、直訳すると「相互に排他的で、全体として網羅的」という意味を持つ概念です。簡単に言えば、情報を整理する際に「漏れなく、ダブりなく」分類することを指します。
ビジネスの場では、複雑な情報を整理し、論理的に意思決定を行うことが求められます。MECEを活用することで、情報の抜け漏れや重複を防ぎ、より正確な分析や戦略立案が可能になります。
MECEを活用することで得られるメリットについては以下のようになります。
MECEを活用することで得られるメリット
- 論理的な意思決定ができる
- 課題の整理が容易になる
- チーム内の認識を統一できる
- ビジネスの精度が向上する
MECEのチェックが難しい理由とその対策
MECEを意識して情報を整理しても、「本当にMECEの原則が守られているのか」「抜け漏れや重複が発生していないか」と疑問に感じることがあります。
実際、MECEを適用する際には、いくつかの典型的な課題が生じることが少なくありません。MECEのチェックが難しい理由を以下に示しました。
MECEの精度を向上させるために、どのような点に注意すべきかを確認し、より正確な情報整理を実現する方法を学んでいきましょう。
人間のバイアスによる漏れ・重複
情報を整理する際に、人間の主観や先入観が影響し、特定の視点に偏ることで、意図せずに抜け漏れや重複が発生してしまいます。
例えば、新規顧客の獲得方法を考える際に、デジタルマーケティングを得意とする担当者が「SNS広告」「SEO」「Web広告」に重点を置いた施策を検討したとしましょう。
しかし、実際には「口コミによる紹介」や「店舗イベント」といったオフライン施策も有効な手法であり、それらを考慮しなかったことで、重要な選択肢を見落としてしまう可能性があります。
また、商品カテゴリーを整理する際に、「スポーツ用品」「フィットネスグッズ」「ランニングギア」とリストアップすると、それぞれが重複していることに気付かず、分類が不明確になることも。
このようなミスを防ぐためには、多角的な視点を持ち、体系的に情報を整理する意識が重要です。
情報の粒度を適切に設定できない
MECEを適用する際、情報の粒度(細かさ)を適切に設定できないことも課題になります。
分類を細かくしすぎると、データが複雑になり、逆に整理しにくくなる一方、大まかすぎると重要なポイントを見落としかねません。
例えば、顧客セグメントを分類する際に、「20代」「30代」と大まかに分けると、詳細なターゲット分析ができません。しかし、「20〜22歳」「23〜25歳」など細かく分けすぎると、データの処理が煩雑になり、実用性が低下します。
MECEを正しく適用するためには、適切な粒度を見極め、情報を整理しやすい範囲で分類を行うことが重要です。
情報の変化や更新に対応しきれない
MECEで情報を整理しても、時間の経過とともに市場や環境が変化すると、分類が適切でなくなることがあります。
例えば、業界のトレンドが変化し、新しい競争要因が生まれた場合、以前はMECEだった分類が崩れてしまうかもしれません。
デバイス市場を例に挙げると、スマートフォンの登場により「モバイル端末」として一括りにされたり、IoT機器の普及で「スマートデバイス」といった新しいカテゴリが生まれたりします。
このような変化を考慮せずに過去の分類をそのまま使うと、実態に即した分析が難しくなります。
また、組織内でMECEを適用して業務フローを整理した場合でも、新しいツールの導入やチーム編成の変更により、作成した分類が不適切になる場合も起こり得るでしょう。
そのため、MECEの適用時には現状に即した形にアップデートすることが重要です。
このようなMECEチェックの難しさを解決する方法として生成AIの活用が挙げられます。
生成AIを使うことで、多岐にわたる情報を短時間で分析し、論点や項目のMECEチェックをスピーディに行うことが可能です。
【実践】生成AIを活用したMECEチェック方法
ここでは、実際に生成AIを用いてMECEチェックを行う具体的な方法を、事例を交えて詳しく紹介します。
今回はChatGPTを使い、WEB業界を例として「自身の整理がMECEかどうかチェックする場面」「必要な要素をMECEに分解する」という2つのケースを実演しました。
それぞれの活用シーンに合わせてプロンプトのテンプレートも掲載していますので、ご自身の課題やテーマに合わせて柔軟に修正し、ご活用ください。
自身の整理がMECEかどうかチェックする場面
MECEかどうかをチェックする際に最も頻繁に直面する場面は、自身の整理がMECEになっているか確認する時です。例えば、マーケティング施策の整理、顧客属性の分類、業務プロセスの可視化などが挙げられます。
今回は「ECサイトのコンテンツ構成」をMECEな状態に改善するケースを取り上げ、実際にChatGPTを活用しました。
プロンプトの入力方法は非常にシンプルで、「次の項目をMECEになっているか確認し、不足や重複を指摘してください」という指示と共に、整理したい項目をリストアップするだけです。
では、実際にやっていきましょう。
このように入力すると、ChatGPTが漏れている項目や重複している項目を明確に指摘しつつ、最終的に以下のようにより適切な分類方法や整理方法を提案してくれます。
このように生成AIを活用することで以前よりMECEなコンテンツの構成案にブラッシュアップしてくれます。
以下に今回使用したプロンプトの例を載せるので、適宜調整してご活用ください。
プロンプトのテンプレート
あなたは[対象の業界]のプロです。次のカテゴリ分けがMECE(漏れなく、重複なく)であるか確認してください。不足しているカテゴリや重複している内容があれば指摘し、改善案を提示してください。
#[MECEかどうかチェックしたい対象]
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目的に必要な要素をMECEに整理する場面
生成AIはMECEチェックだけでなく、新たな課題や検討項目をMECEに洗い出す際にも大変効果的です。具体的には、新サービスや新商品の企画段階において、考えるべき課題を漏れなく洗い出したい場合などに役立ちます。
今回は「LPの立ち上げの際に検討すべき課題」をMECEに整理するケースを取り上げました。
このようなケースでは、「立ち上げに際し、ローンチまでに検討すべき課題をMECEに整理してください」とプロンプトを入力することで、見落としている可能性のある重要なポイントを的確に洗い出してくれます。
ではやっていきましょう。
このように入力すると、以下のように検討すべきポイントをMECEに整理しながら出力されます。
プロンプトのテンプレート
あなたは[対象の業界]のプロです。[目的]に際し、検討すべきポイントをMECEに整理してください。
以上のように生成AIを活用することで、基本的なMECEチェックだけでなく、目的に応じて検討すべき要素をMECEに整理することなど多様なシーンで活用できます。
ご自身の状況や目的に合わせてぜひ積極的に活用し、業務や企画の品質向上に役立ててください。
生成AIでのMECEチェックにおける注意点
MECEの原則を守るうえでAIは有効なサポートツールになり得る一方、絶対的に正しい・完璧とはいえません。以下に生成AIを活用したMECEチェックの注意点を挙げます。
生成AIでのMECEチェックにおける注意点
- 分類精度の限界
- 情報源の偏り・誤り
- 最終判断は人間が行う
分類の精度の限界
AIはデータをもとに論理的な分類を行うことができますが、その分類が必ずしも実務に即したものとは限りません。 業界特有の概念や企業ごとの事情、文脈に依存する情報は、AIが正しく理解できないことがあります。
例えば、飲食業界で売上を分析する際、「客単価」という要素を分類する場合、AIが「セットメニュー」と「基本単価」を別々に扱ってしまうことがあります。しかし、実務ではセットメニューの売上も基本単価に含めて考えたほうが、売上管理がしやすい場合もあります。
このように、AIが出力した分類をそのまま採用するのではなく、ビジネスの実態に即した調整が必要になります。
情報源の偏り・誤り
AIが出力する情報は、学習データに依存しています。そのため、AIが参照するデータの範囲や質によって、出力内容に偏りが生じたり、誤った結論に導かれたりすることがあります。
例えば、市場分析を行う際に、AIが特定の業界のデータしか学習していなかった場合、異なる業界の分析には適用しにくい分類を提案してしまう可能性があります。 また、データの更新頻度によっては、最新のビジネストレンドを反映していない場合もあります。
そのため、AIが出力した情報をそのまま受け入れるのではなく、「この情報は最新のものか?」「分析の視点に偏りがないか?」といった点を慎重に確認することが不可欠です。
MECEチェックを行う際も、AIの出力だけに頼るのではなく、自社のデータや専門知識を活用しながら精査することが求められます。
最終判断は人間が行う
AIは数値データを分析し、一定の論理性をもって分類を提示することはできますが、その分類がビジネスの目的に合致しているかどうかを判断するのは人間の役割です。
また、MECEチェックでは、「情報が網羅されているか?」「重複がないか?」を人間の視点で改めて確認することが重要です。
AIが分類した結果に対し、「この視点が抜けていないか?」「実務において活用できる分類になっているか?」といった問いを投げかけながら、最適な整理方法を導き出す必要があります。
以上を踏まえて、生成AIの出力を参考情報として活用し、人間の視点や経験則を組み合わせることで、はじめてMECEの精度をより高めることができるでしょう。
まとめ
MECEの視点はビジネスの現場で非常に重要な一方、バイアスや視点の偏りで適切にとらえることは容易ではありません。
そのため、生成AIを活用することによって自分に欠けていた視点やダブりのある要素をMECEに分解することが非常に有用です。
MECEの考え方を身につけ、AIの力を活用しながら、より論理的なビジネス戦略を実践していきましょう。
木俣太地
また、前職の株式会社MIXIで培ったブランドプロモーションスキルを活かし、話題化戦略を意識した制作した生成AI活用のアニメCMは、Xにて680万インプレッションを記録。幅広い形で生成AIを活用して、企業の課題解決に貢献。